第7話初デート!?

 6月も終わりに近づいている。合コンの日から2週間程がたった。


 高橋さんと連絡先を交換してからというもの、毎日が少しだけ楽しくなった。日中はお互い仕事で、連絡は取れないのだが、夕方から夜に高橋さんにLINEをすると、数分ほどで返信が帰ってくる。

 別に特別なことを話してるわけでもない。今日は何した? 何食べた? など、他愛もない日常会話だ。


 高橋さんはよく、文とスタンプを一緒に使うことを最近発見した。使用するスタンプは、どれも高橋さんのイメージにピッタリだった。特に高橋さんのお気に入りは、猫のスタンプのようだ。

 誠人も、普段あんまりスタンプを使わなかったが、高橋さんを真似て使おうとスタンプを購入した。最近では、スタンプの楽しさにちょっと気づいてしまったようだ。


 高橋さんとは、LINEですっかり仲良くなったので、6月末の日曜日に夕食も兼ねて映画にでも誘ってみることにする。


「こんばんわ!今度の日曜日に映画でも見に行きませんか?」


 スタンプはズバリ イケメン猫が白いスーツとハットを身につけ、バラを加えてお誘いしてるようなスタンプ使った。


 最初の頃はこんなスタンプ恥ずかしくて使ってられないと思っていたが、今では平気で使える。慣れというものは怖いものだ。


「いいですね! 何見ます?」


「 <隣の貞子(さだこ)さん> なんてどうですか?」


「あー、それ私めっちゃ気になってたやつです!」


「じゃ、13時に駅前で待ち合わせで」


 高橋さんは了解です!ビシッと敬礼した、今人気アニメのキャラスタンプで返しくる。


 <隣の貞子さん> を高橋さんが見たがってることは、浅田 來未さんから事前に情報収集済みだ!



◇ ◇ ◇


 高橋さんと映画兼夕食の当日は、快晴の空だった。ジリジリとした暑さと言うより、蒸し暑い感じの暑さである。


 誠人は、待ち合わせ時間の13時の30分前に、駅前の待ち合わせ場所に到着した。自分でも少し早すぎかな? と思ったが、高橋さんを待たせるわけには行かず、この時間に来ることになってしまったのである。


 13時までは服装の確認や、内カメにて髪型のチェックなどを、何回も繰り返す。その後、高橋さんがいないか、周りを見渡す。それを何回かループしていると、キョロキョロしてる高橋さんの姿が目に入った。


 手を振ると、誠人を見つけた高橋さんはパァッと笑顔になって誠人のところまで駆け寄ってくる。


「ごめん、待った?」


「んーん、俺も今来たとこ」


 初デートのテンプレのような受け答え。周りから見れば、爆ぜろリア充ってやつだ!


「じゃ、少し早いけど行こっか。」


「うんっ」


 先に動き出した誠人を追いかけるように、海も後ろからちょこちょこと早歩きした。


 後ろで手を組んで、周りをキョロキョロと見てる高橋さんは、ものすごく可愛かったのは言うまでもない。


 今日はワインレッドよベレー帽に白いシャツに紺色のスカートで、シンプルに纏まっている。いつもより少し大人っぽい印象を与えてくれる。


 街中でチラホラと視線を集める高橋さん。しかし高橋さんは全く気にした素振りもせず、ずーっと笑顔で誠人とおしゃべりしながら歩いている。


 赤いベレー帽と言ってジャ○子とは、全くの別物なのは言うまでもないだろう。


 映画館につく頃には、13時ごろになっていた。映画の上映が13時半からなので、まだ余裕がある。自動券売機で空いてる2席の券をパネルを操作購入する。


「少し時間もあるし、どうする?」


「あっ、じゃ本屋さんでも寄っていいかな?」


「いいね!行こいこ」


 高橋さんの提案で近くの書店に立ち寄った。高橋さんは、失恋モノの小説を手に取りレジにて会計を済まる。誠人のどこまで歩いて戻ってくる高橋さんに、声をかけた


「へぇー、高橋さん本読むんだ。それどんな本?」


「こらはねヒロインが病気で死んじゃう、よくある系の小説だよ。気になるなら後で貸してあげようか?」


「んー、じゃ読み終わったら今度貸してっ」


「うんっ!」


 高橋さんがどのような本を読むのか誠人はとても気になったのである。

 書店をでると、程よい時間となりシアターへと向かう。まだ、照明は落ちておらず人もまだ入っている途中だった。


 高橋さんは右に座わり楽しそうな顔をしている。よっぽど<隣の貞子さん>が楽しみだったんだろうか。


「まさくん以前より明るくなったよねっ、なんかいいことでも最近あった?」


「えっ、そうかな?んー、分かんないなぁ」


「ふーんっ」


 高橋さんは、唇を尖らせ首を右 左 右と左右に揺らしてる。誠人は、ホントは気になっている高橋さんと、LINEでやり取りをしこうして映画に来ることが、最近のいいことだったのである。


 照明が落ち、ザワザワとしたお客さんの声がおさまる。

 誠人と海も話をやめて、スクリーンの方を向く。


 どうやら<隣の貞子さん>はじまるようだ。

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