第5話誠人の部屋
合コンが終わると、誠人と高橋さんは、二次会には行かず帰ることにした。横でふらふらと歩いてる、高橋さんに目を向けた。
「私の電車○○方面行きですけど、高橋さんは?」
「はい〜、私も同じですよ〜一緒に帰りましょぉっ」
駅のホームには、次の日が土曜日ということもあって、夕食帰りのサラリーマンなどが、長い列を作っていた。5分もせずに電車は来るので、高橋さんと一緒に最後尾に並んで待つ。
自宅が下り方面なので、車内にいた人達は、次第に降りてゆく。しかし、まだまだ人が多くて車内は、窮屈である。
ケータイを触りながら、高橋さんの様子をチラチラと見る。酔いが覚めてないため、フラフラとおぼつかない様子なので、誠人心配して時々様子を見ているのだ。
10分ほどたった頃、席が二人分空いたため、高橋さんを連れて一緒に座ることにした。座って少し時間が経つと、誠人の左肩に何かが乗っかったようだ。バッ! と横を見ると、高橋さんが肩に寄りかかって寝息を立てているでわないか!
しかし、誠人は下心というより、なんというか安心感とでも言った方が、適切だろうか……以前にも肩を貸して、この子と一緒に、電車に乗ったことがあるような気がして、ならないのだ。この違和感は居酒屋で、まさくんと呼ばれた時の感覚に似ている気がする。
(昔、高橋さんに会ったことあったかな? 全く記憶にないんだけど……)
この違和感が知りたい。この安心感の正体を突き止めたい。そんな探求心が誠人の心に、芽生えたのである。
自分の降りる駅に近づいて来るが、まだ高橋さんは起きる気配がない。頭をポンポンとして、起こそうとしてみたが、全く起きる気配がない。
誠人は、困ってしまい、やむを得ず肩を揺さぶった。すると、高橋さんは目を擦りながらこちらの顔を覗き込んできた。
「あ、あの、私は次の駅で降りるのですが、高橋さんはどうでしょうか?」
「あー、私もそこで降りる」
とろっとしたような表情を上から除いてしまい、ピンク色の唇を、奪ってしまいたくなってしまった。心拍数が跳ね上がり、目が泳いでしまう。
電車の中でということもあり、もちろんキスなんてしないが、2人っきりだと、どうなってたか分からない。
きょどってしまった誠人をみて、どうしたの?っと表情を、高橋さんが向けてくる。
降りる駅のアナウンスがなり、甘い空気は吹き飛んだ。席から高橋さんを連れて立ち、2人とも降車したのだ。
駅の改札をくぐり、2人で街灯の明かりが照らす夜道を歩く。誠人は高橋さんの歩幅に合わせて、少しばかり小股で歩く。すると、高橋さんから急に、こんな事を言われたのである。
「ねぇ、まさくんの家に上げてくれない?」
「………ん? えっ?」
「だから、まさくんの家にいれてもらえないかなっと」
「お、おれは構わないけどもう11時過ぎてるよ? 家の方とか大丈夫なの?」
いきなり、高橋さんが家に来るという状況に、ものすごく困惑してしまう。けれど、酔った女の子1人を、どうこうするつもりはなかったので、了承してしまった。
(ほんのすこーしは、そりゃ下心はあるよ。男だもん! しかも、高橋さんめちゃくちゃ可愛いし……)
誠人の家につくまでに、高橋さんが途中で潰れてしまったようだ。仕方なくおんぶして帰ることにした。
高橋さんを背中に担ぐと、かなり軽かった。
女の子ってこんなにも軽いんだっけ?と思うほどに。
胸が背中に当たってることは、言うまでもないだろう。
「懐かしいな」
ふと、誠人の口が動いた。全く意図したことを言わなかった。自分が放った言葉の意味を自分が理解出来なくて、恐怖した。
(懐かしいなって、どういう事だよ)
募る不安や、違和感の原因が分からぬまま自宅に到着し、高橋さんをベッドに寝かせることにした。
シャワーをぱっと浴びて、高橋さんの寝顔を確認すると、すやすやと寝息を立てている。まるで、天使のようだった。そんな高橋さんを見ると、頭を撫でてソファで、誠人は眠ることにした。
もちろん、同じベッドなんて有り得ないからね。
亮がいたら今頃、ベッドに入っていただいちゃえ、なんて言われるかもしれないが、あくまで俺は俺だった。
◇ ◇ ◇
朝、物音が聞こえたので目を擦りながらソファから起きた。ソファで寝たためあまりぐっすり眠れなかったようだ。
ベッドの方に目をやると高橋さんが起きていた。ベッドに座って、キョロキョロと、部屋を見渡しているようだ。
とりあえず、おはようとだけ言ってみる。すると、高橋さんは少し戸惑いながらおはようと答えてくれた。
(あー、朝起きてベッドで横に寝てるのが高橋さんなら、なんて幸せなんだろうなー……惜しいことしたなぁ。でも、嫌われるよりマシだな……うん)
シャワーを勧めてると.合コンのあとの状況を説明して欲しいと頼まれたので、説明をする。話を終えると、高橋さんは浴室へと向ったのである。
自分の分と、高橋さんの分のチーズを乗せたトースト、ヨーグルトのブルーベリージャム添え、コーンスープを準備し、ケータイをいじってると、間もなくして高橋さんがシャワーから戻ったようだ。
メイクを落としてもやっぱり可愛かった。シャワーで少し顔が赤く火照っている高橋さんも最高だった。
「あの、シャワーありがとう。あと、朝ごはんまで…」
「あ、あぁ。気にしないで食べて食べて…」
席につくと、お互いなんて喋りかけて良いのか分からない、無言の間が出来上がった。
(いや、なんて喋りかければいいのこれ? 難易度高すぎるだろ!)
そして、ない頭をフル回転して、出てきた言葉がこれだ!
「お、おいしい?」
「う、うん」
またも始まる沈黙…昨日は酒が回ってたこともあり、話が進んだのだが、この空気耐えれません。誠人のメンタルはガンガン削られてゆく。
すると、高橋さんの方から、誠人が気になっていた話題を、持ちかけてきたのである。
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