第4話海はごうこんに誘われて

 6月中旬


 一昨日の夜に、大学時代の友人 浅田 來未 がLINEをしてきたのである。内容はというと、今日の夜に居酒屋で合コンするとの事で、海を誘ってきたのだ。


 私は、合コン行くのはじめてだからってやんわり断ろうと思っていた。しかし、押しに弱い海は、グイグイくる來未に説得され、結局行くことになりました……


◇ ◇ ◇


 今朝、目がゴロゴロして調子が悪かったので、コンタクトはお預けだ。代わりに、ピンクのメタリックフレームのメガネをはめることにする。しかし、海はメガネ姿に、カールヘアはあまりに似合わないことを知っている。なので、いつもよりメイクを薄くし、髪を後ろで一つ結びにすることにした。


 今日もいつもと同じく朝の7時40分頃に会社につくように家を出る。

 高橋 海 の仕事は受付や接待など、いわゆるOLってやつだ。本日の午後には、この前お話して仲良くなった寺田さんが来るため、いつもより、少しだけ気分がいい。


 午前中は、事務的な仕事を卒なくこなす。ランチタイムでは、同期の子たちと、会社の近くに最近オープンしたばかりのカフェで、昼食を取った。


 午後も、いつもどおり仕事をこなし、予定時間に受付の方へ向かう。自分で言うのもなんだけど、顔はそこそこ自信ある方だ。受付に抜擢されたのも、納得出来る。


 寺田さんが来るのは、4時半頃と聞いているため、予定時間5分前に、受付へと行くと、ほどなくして寺田さんが目に映る。


 (あっ、寺田さんだっ。今日は男性一人連れてきてる……ん?…あれは、もしかして、まさくんじゃんない? やっぱりイケメンやね! でも……どうやら私に気づいてないみたいね)


 そんなことを考えていると、自分の目前まで寺田さんとまさくんが、歩いてくる。

 寺田さんと挨拶を社交的な笑顔でこなす。普通にこなすと、寺田さんはわたしをいじってくる。


 (もう会社入って2ヵ月経ったんだから、慣れるよーって言いたいけど、我慢我慢! 大人の女性を見せないとね。しかも、よりによってまさくんが横にいるなんて、恥ずかしいんだけど…)


 すると、寺田さんの方から話題を変えて、うちの部下の坂井くんだと紹介をした。海にとっては、まさくんなんだけど、向こうは気づいてないみたいなので、初めて会ったと装っておこうと思った。


「はい、初めまして坂井さん。高橋と言います。ヨロシクお願いしますね」


「こ、こちらこそ、初めまして坂井と言います。」


 (まさくん照れてるよっ可愛いんだけどっ。私も少し顔赤くなってるかな? やだやだ私ったら…)


 そんなことぽけーっと考えてると、波岡部長が来たので寺田さんとまさくんを引き渡した。



 この一件で海の業務は片付いたので、早めに切り上げる。夜は來未に誘われた合コンが待っているからだ!


◇ ◇ ◇


 高橋 海は一人暮らしのマンションを賃貸している。5階の窓から見る夕焼けは、なんとも、言えない美しさだ。黄昏時には、オレンジとグレーが混りあった空が見える。この空を見るのが海は小さい頃からとても好きだった。小さい頃、田舎のおばあちゃん家で見た景色は、今でも覚えている。


 自宅につくと、荷物をテーブルの上に起き、スーツをハンガーにさっと掛ける。下着姿になった海は、ここに男性がいると理性のリミッターが外れて、襲われそうになるほど、美人でエロかった。


 洗濯機に下着を入れ、浴室に入る。シャワーを浴びメイクを落すと素顔が見える。いわゆるスッピンってやつだが、ノーメイクでも全然かわいい顔をしている。

 メイクしてる時より、幾分か幼く見え、少しロリっぽい顔立ちをしている。


 6月の夜は蒸し暑いが、そこまで気温は高くないため、七分袖のシャツを選び羽織った。


 メイクは会社に行く用のではなく、遊び用のメイクだ。ピンクのカラーリップ、茶色のアイブロウで太眉にし、鼻を少し高くするためシャドウを鼻筋に入れる。頬には薄ピンクのチークを入れる。


 コンタクトを付けれる状態だったため、メガネではなくコンタクト。髪にはカールアイロンを掛けてお出かけコーデの完成だ。


 少し気合いを入れたため、電車を1本乗りをくれた。

 來未に連絡すると、先入ってるからねと返事が返ってきた。


 私がつく頃にはみんなドリンクを頼んだ後みたいだった。しかし、來未気が利くことに私の分も頼んでおいてくれたのだ。


 (気が利くじゃない來未っ)


 目の前の男性の視線を感じ、目線だけ前の席の男性に向ける。


 するとそこには、坂井 誠人こと、まさくんがいるではないか。少し驚いて、目を見開いてしまったが慌てて平静を装う。


 (あれ、またまさくん、私に気づいてないみたい?お昼会ったというのに、この鈍感めっ)


 自己紹介の流れになり、私の番まで回ってきた。


「はい、高橋 海です、今年で23です。趣味は読書で特に恋愛モノとか読みます!」


 簡潔に自己紹介を済ませると、まさくんがやっと気づいたみたい。少しワクワクしてると、どうやら少し誤解してたみたいだ。


 お昼に会社にあった子としか思い出してもらってないみたいなのだ。少し、積極的にならないと と、自分にハッパをかける。


 巡ってきた座席チェンジタイム。まさくんの隣に座るために、まさくんをこっちに呼んだ。

 少しお酒を飲んで、ほろ酔いくらいにならないと、ダメだなーと思う。少し緊張しているのかな?


 そこからあとのことは、あまり覚えてないが、まさくんにベタベタしてたことだけはハッキリと覚えている。


今思い出せば、まるで痴女みたいじゃないのよ!


◇ ◇ ◇


 目が覚めると、見慣れない天井に、ふかふかとしたベッド。

 自分の自宅じゃないようだ。周りを見渡すと、ソファに横になって寝てるまさくんを見つけた。


 (やば、ここまさくんの家じゃない?酔いつぶれちゃったの?ちょっとちょっとっ…)


 テンパってベッドに座ってバタバタしてると、ソファで寝てたまさくんが起きたようだ。


「おはよ高橋さん」


「お、おはよ…」


 まだ寝ぼけて、目をこすってるまさくんに対し、海は言葉をなくしていた。

 そこで、数10秒の沈黙をまさくんが破った。


「メイク落とした方がいいからシャワーでも浴びてきたら?あと、朝ごはんいる?」


「じゃ、お言葉に甘えて…そ、それより合コンはあの後どうなったの?」


「あー、ほかの6人は二次会に行ったよ。けど、俺はは帰りたかったから、遠慮させてもらったんだよ。

 高橋さんも帰るって言ったから、そのまま高橋さんと同じ電車で帰ってきた。なんだけど、途中で高橋さんが潰れちゃったから、仕方なく家まで運んできたって訳だ」


「そ、その、色々とごめん。迷惑ばっかかけて…」


「あー……気にしないで、ほら、さっさとシャワーでも行っておいで?」


 (すごく恥ずかしいんだけど、まさくんはやっぱりまさくんで優しかった。夜も手を出されてみたいだし。やっぱり今回もまさくんの優しさに、甘えちゃうばっかなのかな)


 そんなことを思って浴室へと向かった。

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