第3話合コンへ

 2人が会社につく頃には、5時過ぎてぞろぞろと社員が帰っている所だった。誠人は今日は残業がないため、早めに会社を出ることにした。


「寺田さんお疲れ様でした。お先に失礼します」


「はい、坂井くんお疲れ様」


 上司の寺田さんに挨拶を済ませ、地下鉄に乗りアパートまで帰る。アパートにつく頃には5時半を回っていた。シャワーと着替えを済ませると、同期の清水 亮との待ち合わせ場所に向かった。


◇ ◇ ◇


「お待たせ亮」


「お疲れ様ー、時間ぴったしだな。今日の女陣は美人揃いだぜ。期待してなよ」


「へいへい、楽しみにしてるわ」


「何その棒読みっ、合コンまでにはテンション上げといてくれよな?」


「お、おう。まかせとけ」


 仕事終わりで疲れてる誠人に対し、亮はかなりテンションが高かった。これから、お開きまであのテンションに付き合わなきゃと思うと、少し気だるい。


 駅から5分程歩いたところの居酒屋に男2女3の集まりが見えた。こちらに気づいた5人に、亮はばんわーなどあいさつをしてる。それに習って、誠人も挨拶をする。


 女性の方に知ってる顔はいなかったものの、男性2人は知ってる顔だった。2人とも亮の大学時代の友人で、よくTwitterなどで見かける2人だった。

 名前はたしか、茶髪ショートで顎髭のある方が達哉(たつや)で、黒髪ショートの方が智(さとし)だったはずだ。


「あと1人少し遅れるみたいだから、先に入っちゃお」


 女性陣の明るめの茶髪ボブの子が男性陣に提案してきた。もちろん受け答えは亮たちに任せる。


「OKじゃ、先入っちゃお」


 返事をすると6名は店の中にさっさと入っていった。なので、誠人もそのうしろから付いていく。


(懐かしいなこの店。8ヵ月ぶりかな…)


 店員にすすめられた席は4対4の八人座席だった。座る順は店に入った順に自然な流れで席についた。


 もうひとりの子が来る前にみんなドリンクだけ頼むようだ。

 誠人は、ビールを頼む。男性陣はビールとかなのに対し女性陣はチューハイやサワーなどを頼んだようだ。女子って感じだな。

 ドリンク注文して、間もなくもう1人の女子が遅れてやってきた。


 空いてる席、つまり座る位置は必然的に誠人の目の前になる。


 遅れてきた子は黒髪ロングで先にカールをかけている。白いTシャツに赤のチェックの七分袖をはおり、黒いスカートをはいていて、おしゃれな子だった。


 誠人が遅れてきた子に見とれていると、その子と視線があったのである。遅れてきた女の子は、少し目を見開いたが、すぐに見開いたのがおさまり、ニコッとした顔で会釈される。ぶっちゃけ、めちゃくちゃ可愛かったし、誠人の好みのタイプだった。


 すると、横から亮が不敵な笑みを浮かべ、誠人に小声で話しかけてきた。


「今日来てる子達みんなフリーだ、なんで誰お持ち帰りしてもいいんだげ誠人?」


「バカッ、今日はオマケとして付いてきたんだし、大人しくしてるよっ!」


「つれないなあ誠人っ」


 亮が馬鹿なことを言っていると、自己紹介をする流れになり、それぞれが名前、年齢、趣味もろもろを紹介することになった。


「坂井 誠人 歳は24です。趣味はイラストを書くことです。 今日はヨロシクお願いします」


 簡単に自己紹介を済ませると、女性陣からどんなもの描くの? など、いくつか質問が来たので、普通に答えて女性陣側の自己紹介に回した。


「はいはい、じゃ次は私ね。浅田(あさだ) 來未(くみ)

です。今年で23、趣味は恋愛かなー、あと写真撮ることとかです!」


 茶髪ボブの子は浅田 來未さん。盛り上げ役って感じの雰囲気で元気そうな子だ。

 残り2人も、簡単にそれぞれ紹介を済ませ、最後に遅れてきた子の番になった。


「はい、高橋 海です、今年で23です。趣味は読書で特に恋愛モノとか読みます!」


「えっ? 高橋さん」


「はい、お昼にお会いしましたね」


「なになに、2人とも知り合いなの?」


「うん、波岡部長に挨拶に来た時に受付でちょっとね。とは言っても、今日初めて会ったんだけどね」


 受付で会った高橋さんは、メガネをはめていてポニーテールだった。しかし、今目の前にいる高橋さんは、メガネをはめておらず、インテリ系美女がオシャレな美女に変わっていたため、誠人は気づかなかった。


 自己紹介が終わってしばらくすると、男女混合の席替えをすることになった。誠人余った席でいいやと、思っていたのだが、高橋さんに手招きされて、高橋さんの横に座ることになった。




2時間ほどする頃にはみんなそこそこ酔っている状態になり、元々高いテンションがどんっどんっと上がっていく。横に座ってる高橋さんも出来上ってしまったようだ。


「へー、じゃあ誠人くんは彼女いないんだっ。モテそうなのになぁ〜」


「ま、まぁ、でもた、高橋さんは可愛いから絶対彼氏いると思ってたよ!」


「きゃっ、可愛いなんて。ふふふっ」


(待て待てどういう状況だ。高橋さんが寄りかかって胸が腕に当たってるんだけど!? 男としてピンチってやつだ。いかんいかん、理性ピーンチ!)


「まさくん?何考えてるの?」


「いや、何もー」


その言葉で、ふっと誠人は違和感を覚えた。


そう、どこかで聞き覚えのある声のトーン。

そう、懐かしい誠人の呼ばれ方。


この子と以前どこかで会って話したことがあるのではないかと、心に引っかかったのである。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る