第2話寺田さんと挨拶へ
「ここは……」
周りを見渡すと辺り一面は、白い壁と白い床である。そんな正方形の部屋にあるのは、二つの木製の扉。金の取っ手がついた洋風の扉。
「あなたが選んだ扉は本当にあれで良いのでしょうか?」
「どこがダメだったか教えて欲しいね! まったく……見当もつかない。自分ではうまく事を進めたつもりだったのにな。しかしな、終わっちまうとさ……俺の選択がすべてダメだったてことに、気がつくんだよ……
どうせ終わるまで続くんでしょ?わかってるよ、やんなきゃいけないんでしょ? 神様!」
「いいえ、これが最後です。どうか、運命の人と結ばれることをお祈りします」
優しい声の残響が部屋に残る中、不意に部屋に電子音が響き、ふわっと浮いてふっと落ちた。
◇ ◇ ◇
目を開けると、そこはいつも通りの天井。体はベッドに横になっていた。一人部屋にケータイのアラーム音が鳴り響いている。
「夢か……」
ケータイのロックを解除しアラームをとめる。時間を確認しようとケータイに目を向けると、朝の7時と表示されていた。
大学を卒業するまで、実家暮らしだった坂井 誠人は祖母 父 母 姉 自分の5人暮らしだった。しかし、地方から都会に就職した誠人は、当然ながら、1LDKアパートでの一人暮らしだ。
一人で、朝起きれるか不安だったが、一人暮らしを始めると自然と起きれるようになったのである。
リビングのテーブルには、昨晩の残り物のサラダとマーガリンをぬったトーストとインスタントコーヒー準備して、ケータイを見ながら朝食を済ませる。
スーツに着替えから、支度を済ませ終わる頃には7.時分頃になってるので、誠人自宅を出るのである。
以上が坂井誠人の朝だ。
近くの駅まで徒歩で歩き、地下鉄に乗り通勤する。地方の通勤時刻の電車は、都会ほど満員ではないため、初の都会通勤はどっと疲れたのは、今でも覚えている。
社会人2年目の誠人は慣れてしまったため、、予定通りの7時50分には自分のデスクにに到着することが出来るようにっている。
「おはよ、坂井くん」
「おはようございます。寺田さん」
「午後から外回りするから付いてきて。だからー、午前中に溜まってる仕事片付けといてね」
「了解です。では、13時に寺田さんのデスクにお伺いしますね」
「うん。じゃあ、よろしくね」
今日の日程を確認し、寺田さんは自分のデスクに戻っていった。
頼まれた書類に一通り目を通して、ペース配分を考え仕事を黙々と片付ける。
頼まれた仕事を片付け終える頃には、11時45分頃になっていた。
昼食は会社の食堂に同期を誘って食べに行くのが、いつものサイクルである。今日の日替わり定食は、ハンバーグもしくは酢豚だったため、好物のハンバーグを選ぶことにした。
「そーいやさ誠人は彼女とかおらんの?」
「大学の時にはいたけどね…去年の夏に別れたきりいないや」
「おっ、ならさ!今日の夜空いてる?合コン行かね?1人パスしちゃってよ人足りないんだよね」
「あー、別にいいけど、何時? それまでに仕事片付けとかないとな」
誠人と相席してるのは、同期の清水 亮(しみず りょう) 顔はイケメンなんだが性格が難ありって感じの残念系男子。無類の女好きで、この前二股かけて彼女に振られたと言うのに、こりないやつだ。
昼食を済ませ寺田さんのところに向かうことを告げ、食堂で亮と別れた。エレベーターにのり、オフィスのあるフロアで降り寺田さんのデスクに向かったのである。
「寺田さん、準備終わりました」
「坂井くん早いのねっ。5分程待ってて、部長に報告してくるから」
「了解です」
部長のデスクまで歩く寺田さんを見送り、待つこと5分程して予定通り寺田さんは戻ってきた。
「じゃ、さっさと行って定時で帰ろか!」
「はーい!」
寺田さんと2人きりで、外回りに行ったへと向かったのである。
◇ ◇ ◇
「寺田さん、ラストはどこの会社ですか?」
「あぁ、次は○○株式会社だ。あと一駅で降りるからな。」
「了解です」
カタンコトンカタンコトン線路の継ぎ目の上を車輪通ることによって、同じリズムで音を刻む。
手元の腕時計を確認すると16時を短針が回った所だった。13時から寺田さんに同行して、はやいとこ3時間程が過ぎたのであった。
目的の駅に付いたため、寺田さんと誠人は降りる。電車から降りる客は、学校帰りの学生や、大学生が主だった。帰宅時間の始まりである。降りてから5分程の歩くと行先の会社を視認できた。
「へぇー、この会社とも取引してたんですか」
「あぁ、ここは私がはじめて仕事をもらったところでな、思い出のある会社だよ」
「寺田さんの若い頃か…うんうん」
「ん?なんか言ったか?」
地雷を踏んでしまったようで、横目に見ると寺田さんは少し機嫌を悪くした事が確認できた。
「いえいえ、誤解です! 断じて悪い意味じゃないですよ!」
「必死に説明してるとこ怪しいなぁ」
「ではでは、時間もないので行きましょうか!」
冷や汗がコメカミのあたりを流れると寺田さんから視線を外し、スタスタと会社のドアの方へ歩いた。
後ろからは、
「ちょっと待ちなさい、帰りにたっぷり言い訳聞いてあげるからね」
なんて言葉をかけられ、なんとも嫌な予感しかしない。地雷を踏んだのは自分だし自業自得と言う奴だ。
「こんにちは。本日はどういったご要件ですか?」
「こんにちは、 ××株式会社の寺田です。マーケティング部の浜岡部長に連絡お願いします」
「かしこまりました」
事務的な挨拶を済ませると、寺田さんの方から受付の若い女の子に笑顔で話しかけた。
「随分なれましたね、高橋さん。春にお会いした時はまだまだ新人って感じだったのに。」
「はい、初めてお会いした時は新米でしたので!」
「へぇー、仕事の方は順調?」
「はい、お陰様で」
高橋さんの笑顔は、とてもかわいかった。写真に保存したいくらいに。
「あと、こいつはうちの部下の坂井だ。今後はこいつひとりで来る時もあるかもしれないから、その時はよろしくな」
「はい、初めまして坂井さん。高橋と言います。ヨロシクお願いしますね」
「こ、こちらこそ、初めまして坂井と言います」
挨拶を終えた頃、マーケティング部の部長 波岡さんがエレベーターで降りてきた。
寺田さん 誠人 波岡さんの順に軽く挨拶をし名刺の交換を行った。
◇ ◇ ◇
16時30分頃に、挨拶を終え、寺田さんと誠人は会社への帰路につく。
寺田さんが、窓の外に向けている視線を誠人の方に向けた。
「受付の子可愛かっただろ?」
「は、はい。可愛かったです。寺田さん知り合いだったんですか?」
「いや、この前1人で行った時にたまたま高橋さんが受付をしていてね、波岡部長の都合が悪くて待たされたんだよ。その時に、話し相手になってくれたのが高橋さんってわけ」
「へぇ、どんな話とかしたんですかー?」
「なんだ坂井くんは、ガールズトークの中身を聞こうってのかい?」
寺田さんが一瞬で小悪魔に変身したのだ。顔は可愛いのだが、内に秘めたる邪悪なオーラをぷんぷん匂わせている。そういう時の寺田さんはいつも不機嫌になる。
なので、すぐさま話題チェンジがプロの技って訳だ!
「えっ? いやー、やっぱり何でもないですっ…そう言えば、高橋さん」
「ふふっ、坂井くんも私の扱い方も上手くなったのかっ」
話題を変える途中に言葉を遮られ、自分の頭の中を見透かされたような感覚になった。冷や汗をかいた坂井とは正反対に、寺田さんは表情を緩めクスクスと笑っていた。
そんな、上司と部下も楽しそうに話していると(寺田さんだけ)会社の最寄りの駅までつき、徒歩でオフィスまで二人で歩く。内心、誠人すこしヒヤヒヤしていた。
寺田さんが機嫌損ねると、いじられるからだ…!
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