第6話 プロメテウス!
「どうかしましたか?」
食後のお茶を飲んでいると、エルフのひとりが言った。
「いや」
「おいしくなかったですか?」
「おいしかったよ。でも食べすぎちゃったなって……」
「もしかして、お腹痛いですか?」
「ううん、ウエイトのほうがね……」
せっかく運動したが、食べた分と相殺、いや、食べたほうが多い予感がひしひしとある。
「ああ……」
エルフは申し訳なさそうにする。
「すみません。気がつかなくて」
「いや、そんなの気づかれないほうがいいよ。料理は本当においしかったよ」
「ありがとうございます」
ケンタウロスが口を挟む。
「気がつかなかったと言えば、あなたはもしや、伝説の……」
「はい、この方こそが、伝説の勇者、ヨシノさまですよ!」
「ひええ!」
ケンタウロスは急に縮こまる。
「いやあ、楽にしてよ」
「しかし……」
「いいから、いいから」
「そうですか」
そう言うと、ケンタウロスは楽にした。気の抜けた表情。
けっこう簡単に楽にするんかーいと思ったが、ややこしくなるから黙っていた。
「勇者さまとは知らず、ご無礼を、差し支えないようでしたら、ひとつ良いですか」
「なに?」
「勇者さまはすごいスキルをお持ちと聞きます」
「まあね」
「たしか、真剣に全力で願ったことを、そのままスキルにできるとか」
「うん、チートだよね、我ながら」
ケンタウロスはロダンの考える人よろしく、顎に手の甲を当てる。自分の考えに納得がいったのか、頷いてから口を開く。
「そうまで、お太りになられたことを気にするのなら」
「なーんか、カチンと来るなあ」
「申し訳ございません!」
「いいけどさあ、それで?」
「はい、それならば、痩せることを真剣で全力で願えば、痩せるスキルが身につくのではないでしょうか?」
そのとき、稲妻に打たれたような衝撃が、わたしの全身を駆け巡った。
びりびりびり!!!
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