第2話 ダンジョンランナー

 魔王が去ったあとも、ラストダンジョンの最深部は、異世界最強モンスターたちが住処としている。

 巨体で力が強い上に魔法も使いこなす魔人種、時空を歪め高速移動多段攻撃を得意とする幽霊種、強靭な攻撃耐性のうろこを持つドラゴン種。前半ダンジョンボスの親戚なんてのもごろごろいる。


 彼らは生態系の頂点でありながら、捕食すら必要としない。ダンジョンの持っているマナをそのまま生きる糧へと変換できるのだ。

 だが、争いがないわけではない。魔王がいなくなり、冒険者も来なくなったダンジョンでは血の気の多いモンスターたちの小競り合いが絶えなかった。


 ドラゴンブレスはあらゆるものを燃やし尽くし、幽霊種は空を飛び地面に体を潜らせ、魔神種が生み出したアンデッドモンスターは不滅のごとく行進する。あまたの冒険者を葬った一撃必殺が飛び交う。


 調子良く攻防を繰り返していたモンスターたちが一斉に動きを止める。まるで石像にでもなったように。数秒の間のあと、同じ方向を伺うように見る。


 どすん。どすん。どすん。


 その地響きは、モンスターたちの感じた幻覚だった。彼女には地響きを起こすほどの質量はないはずだ。強大すぎるマナの特異点、その存在感はあきらかに魔王を越えている。生存本能に刻みつけられた恐怖心が、モンスターたちに幻覚の地響きを感じさせたのだ。


 どすん。どすん。どすん。


「ああ、いいよ、いいよ、気にせず続けて〜」


 ジャージの少女はのんきにそう言って、戦線の真ん中を駆け抜けていった。

 毒気を抜かれたモンスターたちはしょんぼりとして、それぞれの住処に帰っていく。

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