第44話 劉表からの招き
劉備が呂布を討ち、しばらくして徐州に新たな訪問者が現われた。荊州別駕の伊籍幾伯。
「荊州の別駕である伊籍殿がどの様な御用です?」
「実は我が主 劉表が劉備殿にご相談したきことがあるので、是非一度、荊州の城にお招きしたいと」
「分かりました。準備ができ次第、部下と共に荊州に参りましょう」
劉備は伊籍を見送ると早速、軍議を開いた。
「では私は誰と荊州に行くべきかな?」
「劉表の相談を聞きに行くだけでしょう」
「しかし、態々、劉備殿を呼びつけるのだから重要な話なのでは?」
「内容はどうあれ、袁紹・曹操・孫策・周りの連中がいつ攻めてくるかも分からない状態なんだ。将も兵士もそんなに大勢は連れて行かれないだろう」
「ならば、趙雲と関羽の二人と兵を五百程度連れていこう」
「分かりました。少々、兵士が少ない気もしますが」
「戦に行くのではないのだから」
「ご安心下さい。劉備殿を必ず無事にこの城にお連れします」
「では残った我々も領地を守り抜く事を誓いましょう」
「では後の事は任せたぞ」
「お気を付けて」
こうして劉備は関羽と趙雲等を引き連れ劉表の待つ荊州に向かった。
荊州に着くと直ぐに劉表に会った。
「それでご相談と云うのは」
「その事だが此処では話ずらい」
そう言うと劉表は劉備を奥の部屋に案内した。
「お前達は此処で待っていろ」
「分かりました」
案内された部屋には一人の女性が茶の支度をしていた。
「彼女は後妻の蔡。後は私がやる。お前も下がりなさい」
やがて劉表が二人っきりになると口を開く。
「相談したいのは私の二人の息子のことなのだが」
「確か、劉琦殿と劉琮殿でしたね」
「私に何かあればあの二人の内どちらかが私の後を継ぐことになる。しかし、どちらも若く頼りない。また、どちらに継がせるべきか家臣たちの意見も二分していて私も簡単に決めきれない。だから、君の意見を聞きたい」
「私に荊州の後継者を決めろと」
「君は二人の内どちらが私の後を継ぐべきと思う?」
「一つ質問をしても?」
「なんだ?」
「あの二人ではどちらが兄になるのですか?」
「それは劉琦だ」
「ならば私は劉琦殿を後継者に推します」
「その理由は?」
「簡単な事。家督を継ぐのは昔から兄と決まっています」
「成程。ですが今は劉琮を推す声が少しばかり多い」
「劉琮殿が押される理由は?」
「劉琦が幼い頃から体が弱い事も理由の一つだろうが、この荊州は昔から祭氏の力が強く、私もこの荊州の統治に力を借りた。弟の劉琮は祭氏の血を引いているので劉琮を跡継ぎにするべきだとの意見が多い」
「劉表殿のお考えは?」
「私も劉琮を跡継ぎにと考えている」
「理由は?」
「これからも祭氏の尽力無しに荊州は守れん」
「そんなことはありません。どんな土地も優れた人物が一人いれば自然と治まるものです。別に蔡氏がいる必要はありません」
「劉埼は優れた人物に成るだろうか?」
「御子息を信じて経験を積ませるべきです」
「良し!君がそこまで言ってくれるなら後継者を劉埼としよう」
「後継者を決められたなら早めに通達すべきです」
「蔡氏の反発が気になる処だが」
「そんなことを気にしてはいけません」
「主の言は絶対。余りに図に乗るようなら蔡氏の力を徐々に削ぐ事も必要です」
会談は終わった。この会談は二人だけの秘密であるが、衝立の裏で一部始終を祭氏が聞いていた。
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