第39話 呂布と袁術
新体制で始まったはずが、いきなり楊奉と韓暹の離反を招く。無くなった二つの役職、大将軍を劉備。驃騎将軍を曹操が兼任した。だが問題はそれだけではなかった。
徐州 彭城 劉備軍
劉備は関羽・張飛・荀彧等と献帝の元を離れ今後の事を話し合っていた。
「どうして、呂布軍を1ヶ所に集めたんだ。しかも、何で下邳なんだ?」
「陳珪殿が呂布軍を1ヶ所に集めるなら下邳にするべきと仰ったので」
陳珪 漢瑜 陳登の父である。
「分散させて徐々に力を削ぐのではなかったのか?」
「最初はそれでいいと思っていたんですが、陳珪殿が敵を除くなら早いほうが良いと策を戴いたので、それを実行したんです」
「まぁ、1ヶ所に集めた方が対処はしやすいか」
「それでどんな策だよ」
「呂布軍を下邳に籠城させ、近くの沂河と泗河の水を引き込み、水攻めにします。更にその後に全軍で包囲して兵糧攻めです」
徐州 下邳城 呂布軍
呂布・陳宮・張遼・高順は今後について話し合っていた。
「俺達はいつ動く?」
「劉備から領地を奪うには入念な準備が必要です」
「劉備軍は精強だ。それに関羽殿を始め、厄介な将も多い」
「将の質は兎も角、兵力差が大きい」
「故に我が軍だけで劉備軍とは戦えません。私は同盟を組む相手として袁術と孫策を考えています」
「確かに同盟者がいた方がいいが、しかし、袁術を頼るというのは」
「信用はなりませんが、彼の持つ兵力は魅力的です」
「ならば孫策と同盟を?小覇王と呼ばれ勢いのある孫策と組むのも良いが、果たして、彼らが我々を信用するだろか?」
「同盟は信用より利害一致が何より大事です。袁術も孫策も中原に進出を考えているはず。そうなれば、必然的に劉備と争う事になるのだから、どちらにとっても、我々との同盟は悪い話ではないはず」
「俺は誰とも組まんぞ」
「何故です?」
「他人の力を借りるなど気に喰わん」
同盟案を否定された陳宮が次の案を出す。
「ならば先に袁術と戦いますか?」
「我等が袁術と争って何になるんだ」
「今より兵力差が無くなります」
「袁術軍の兵を手に入れてから劉備と決戦すると言う事か?」
「袁術軍は劉備軍と違って精強でなく、兵を率いる将も大した人物はいません」
「それでも兵力差はどうしようもないでしょう」
「そこで我等は劉備と共に攻め込むのです」
「我々は劉備の土地を奪おうというのに、その劉備と共に袁術を攻めるのです?」
「袁術を攻め、先ずは彼の治める寿春と兵を奪う。劉備も袁術を討とうとしていますが我等のことがあり積極的に動けない。共に袁術を討とうと誘えば、劉備は我々に対しての警戒を緩めるでしょう。その間に孫策と同盟し、南の憂いを無くした上で劉備との決戦に臨めます」
「何故。俺が劉備の為に袁術を討たねばならんのだ」
「今の我々が取れる選択肢は限られているのです」
その日の夜 徐州 彭城
「お休みの所を申し訳ありません」
「構わん。それで密偵を捕らえたらしいな」
「はい。どうやら袁術の手の者のようです」
「袁術は何を企んでいるのでしょう?」
「捕らえた密偵が密書を持っていました」
「袁術は何を企んでいる」
「呂布に共闘して我々を討とうと云う内容の密書です」
「野郎、まだ懲りてないのか」
「それでは袁術を攻めに出れば呂布が、呂布を攻めに出れば袁術が徐州・豫州を攻めてくるのでは?」
「それならば呂布に袁術を攻めさせましょう」
「呂布が簡単に動くか?」
「彼らは兵と領地を欲しています。とはいえ呂布軍だけでは袁術を相手にはできませんから我等も共に戦うべきです」
「呂布と共闘なんてできるか!」
「しかし、袁術は倒さなければならない相手だし、倒せば呂布との戦に集中できる」
「密偵の方はどうする」
「袁術が呂布に当てた密書は改ざんして下邳城に矢文を打ち込み、袁術には呂布軍の密書を捏造し寿春城に打ち込みます」
翌日 下邳城
「呂布殿 城内にこのような物が」
「矢文か? 誰からだ?」
「如何やら 袁術からのようです」
「しかし、袁術は何故、この様な事を。劉備の手の者に見つかったらどうするつもりだ」
「如何やら奴は俺と劉備を争わせたいらしい。見ろ。この文を」
「・・・これは随分な物言いですな」
「やはり、袁術との同盟などあり得ん。癪だが劉備と組んで袁術を討った方が増しだ」
後日 揚州 寿春城
「袁術様 今朝方 兵士がこの様な物を」
「何だそれは?」
「呂布からの矢文のようで」
「矢文だと、失礼な!儂は人を遣わせたのに矢文で返事とは」
「文の内容は先日の件の回答のようですが、断ってきました」
「何だと。見せてみろ」
文の内容を見た袁術は激怒した。
徐州 彭城
「荀彧 あれから両者の動きはどうだ?」
「共に攻めてくる心配はないようです」
「そうか。それは良かった」
だが後日、呂布に同盟を断られた袁術はとんでもない暴挙に出る。
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