第33話 大徳 劉備玄徳
徐州牧の劉備は近頃よく豫州にいる事が多い。曹操軍の侵攻を受けた街や集落を復興させる為だ。この頃から劉備は領民に大徳や仁君と呼ばれ慕われていた。
「この集落にもようやく活気が戻って来たな」
「これも全て劉備様のお蔭でございます」
「そんな事はないさ」
「これからもどうか宜しくお願いします」
「ただ、私は徐州の牧でもあるからな。復興も随分と進んだから帰るぞ」
「そうですか」
「近い内にまた来る」
そう村人に言い残し劉備は徐州に戻った。その徐州で新たな問題が起こる。兗州で曹操に敗れた呂布が庇護を求めて来た。そして劉備は家臣皆が反対する中受け入れを承諾した。
「我が君!どうか御考え直しを」
「奴を受け入れて何の得があるんです!」
「損得の問題ではない。困っている者がいれば私はどんな者でも手を差し伸べる。」
「いずれ手のひら返して襲って来るに違いありません」
「奴を受け入れれば余計な争い事を招きます」
「曹操や袁紹達に攻める口実を与えてしまいます」
「攻める側は口実など無くても攻めて来る」
「呂布は我々を曹操と争わせたいのです。そして、どちらか弱りきった方の領土を奪うつもりでしょう」
「呂布が我々を利用しようとするのなら我等も呂布を利用すれば良い事だ。それに呂布がいると分れば曹操達も簡単に手を出せないだろう。何より今の我々が落ちぶれた敗軍の将に後れを取るとは思えんが」
「はぁ~そこまで我が君の御意志が固いのならこれ以上は何も申しません」
「!! 荀彧殿 軍師の貴殿がその様な事では」
「我が君の性格は関羽殿も御承知のはず。それに、全ての決定権を持つのは私ではありませんから」
「さて、話はついた。客人を迎えに行こうか」
「態々、お迎えに行かれるのですか?」
「それはいけません。殿はここでお待ちください」
「客人を迎えるのは当たり前だろう」
「此方から招いた訳ではないのでそんな必要はありません」
「我々がお迎えに上がるので我が君はこの城でお待ちください」
こうして臧覇と趙雲が兵を率い呂布軍を迎えに行った。
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