第29話 揚州の覇権争い
群雄割拠の中、北の各地で公孫瓚・袁紹・劉備・曹操等が覇権を争っている。では南はどうだったのか。南には揚州があり、そこには北の覇権争いに敗れた袁術が太守不在の混乱に乗じて寿春一帯を占領していた。幾ら覇権争いに敗れたと言っても袁術の軍事力は侮れず朝廷が正式に認めていた揚州の刺史だった劉繇が曲阿に駐屯せざるをえなかった程だ。
揚州 寿春城
「袁術様 豫州の牧 陶謙が死んだと云う知らせが」
「何!それは本当か? ならば早速、豫州に攻め込もう」
「豫州の土地は広く、南陽で失った物を取り戻すのには良い土地かと」
「それに大将が不在の今なら直ぐに落とせしょう」
「攻めるのは構いませんが 兵糧はどうします。最近の飢饉でそう多くは出せません」
「ならば蘆江太守の陸康に援助を頼もう」
こうして袁術は豫州を攻めようとしていたのだが、後日取りやめになった。出撃の少し前に豫州を劉備が手に入れた事が分かったこと、そして兵糧の援助を頼んでいた陸康が兵糧を送らなかったから。
「くそー 劉備め! 何の苦労もせずに豫州を手に入れるとは」
「只でさえ、土地の豊かな徐州を有しているのに豫州まで」
「本当なら今すぐにでも、攻めてやりたい処だが」
「流石に今の我等では」
「分かっている。しかし、今は劉備の事はどうでも良い。今、儂が気に喰わんのは頼みを断った陸康の事だ。陸康も私を見下しているのか?」
「それは分かりませんが、攻めるのには良い機会かと」
「そうですね。前回の敗戦からの傷も少しずつ癒えてきています。それに北では覇権争いが激化していますから、我等も即座に南の劉繇を攻略し、北の軍勢に備えるべきかと」
「そうだな!そろそろ動き出すか」
こうして袁術は揚州の攻略に乗り出した。丹陽郡の太守周昕と九江太守の周昂には孫賁と呉景を攻略を任せた。孫賁は孫堅の死後、軍勢を預かり、袁術の傘下に入っていた。そして蘆江の陸康の攻略は孫堅の息子の孫策に任せた。その後も孫策達は次々に揚州を攻略していく。
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