第28話 最後の頼み
豫州に侵攻してきた曹操軍を止める為に来ていた劉備軍。しかし、その曹操軍が直ぐに引き揚げたので劉備も徐州に帰ったのだが、劉備達には何故曹操軍があんなにも早く引き揚げたのか理由が分からなかった。
徐州 彭城
「しかし曹操殿は何故あんなに簡単に引き揚げたのだろうか?」
「俺らと戦うのが怖かったんだろ」
「それはないだろう。あれ程、激怒していた者が我等が来たくらいで」
「何か兗州で良くない事でも起こったか」
「袁紹にでも攻め込まれたんじゃねのか?」
「袁紹は公孫瓚と北の覇権を争っていて曹操まで相手にできんだろう」
「荀彧は何か知らないのか?」
「曹操が責められたのは袁紹ではなく呂布ですよ」
「それは本当か?」
「ええ 現在 曹操と呂布は兗州の覇権を争っています」
「呂布の奴 兗州にいたのか」
「各地に間者を放って彼の動向を探らせていたんですが、彼が兗州にいるのが分ったのも最近のことですが」
「なぁ それなら俺らも兗州に攻め込もうぜ。呂布と曹操を一遍に打てるだろ?」
「それはダメだ。翼徳」
「何故?」
「そんな卑怯な真似はしたくない」
「それに我々は立場上 此方から攻め込む様なことはできません」
「チェ!なんだよ。面白くねぇ。最近は戦に出る機会が減ったから退屈なんだよ。この間も折角、曹操軍とやりあえると思ったのに」
「そんなに不貞腐れるよ張飛。残念だが戦はまた直ぐに起きる」
「いっておくが 俺も戦が好きな訳じゃないからな」
「分かっている」
そんな話をしていると
「劉備様 豫州別駕の陳羣様がお越しです」
「そうか 分かった。直ぐに此方にお通しせよ」
「お久振りです。劉備殿。この間は大変お世話になりました」
「我等は大した事はしておりませんよ」
「それで貴殿が態々、此方に出向かれたのはどの様なご用件で?」
「本日は大変、重大なお願いがございまして、付きましては劉備殿には今すぐにでも我が主の陶謙の元まで御足労願いたく」
「待ってくれ!陳羣殿。 その重大なお願いとはなんだ。それに簡単に殿を一人で行かせる訳には」
「はぁ~仕方ありませんね。ならば御付きの方の御同行も許しましょう」
「別に私は一人でいっても構わんのだが」
「安心してください。関羽殿が心配する様な事はありませんから。絶対に」
こうして劉備と関羽は陳羣と共に豫州の陶謙の待つ許昌へ赴くことに
豫州 許昌城
「陶謙様 只今 陳羣が徐州の牧 劉備様を連れて戻りました」
「そうか 入りなさい」
劉備と関羽は驚いた。そこにいた人物がつい先日言葉を交わした陶謙とは余りに違い過ぎたから
「本当に陶謙殿か?」
「そうです」
「元々陶謙様はご病気で特に最近は重篤に陥り、医者の話ではもう長くないと」
「本当は私が頭を下げに貴殿の元に行くべきだが、それが叶わないので態々御足労したのです」
「それで私に何をお願いしたいのですか」
「私、亡き後の豫州を貴方に任せたい」
「陶謙殿にはご子息がいるでしょう」
「私は忠臣である者と無い者の区別がつかぬ愚か者。また、隣国の圧力に屈してしまう臆病者です。きっと息子共は私と同じ過ちを犯してしまう」
「そうでしょうか?」
「それに先日の曹操軍の侵攻の傷跡が癒えていない。今の豫州を立て直せるのは劉備殿 貴方だけだ」
「・・・少し お時間を頂きたい」
そう言って劉備は徐州に戻り、この発端を張飛等に話すと呆れられた
「はぁ? 時間をくれ? なんでその場で承諾しなかったんですか?」
「全く 貴方と云う人は」
「まぁ まぁ お二人とも それが殿の良い処でしょう」
麋竺の誉め言葉も余り意味が無かった
「別に私で無くともいいだろ」
「陶謙殿から奪った訳でなく、頼まれたのだから貴方が負い目を感じる必要はないでしょう」
それから数日後 陶謙が亡くなった
「劉備殿 陶謙殿の最後の願いどうか お引き受け頂きたい」
「豫州の民も貴方が上に立つことを願っております」
「そうか 民までもがこの私が上に立つのを望むのか」
そして劉備は豫州も治める事になった。それと同時に豫州兵と陳羣・劉琰・陳到等を傘下に加えた
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