第26話 曹操激怒

群雄割拠の中、曹操も着実に勢力を拡大していた。兗州の賊を平定し、攻め込んできた南陽の袁術と豫州の陶謙を袁紹と協力し敗走させた。ちなみに袁術は本拠地の南陽への道を劉表に抑えられた為に揚州に逃走。


兗州 鄄城


その日 曹操は腹心の夏侯惇・郭嘉等と談笑していた


「そろそろ此方に父上を呼びたいのだが」


「大変お喜びになられますよ」


「御父上の住まわれているのは徐州です。この際、護衛の依頼でもしてみては?」


「これを機に仲良くなれと?」


「現在、彼は中立の立場を取っており、誰とも同盟は組んでいませんが協力者は欲しいはず。それに彼の立場上、此方から仕掛けなければ争う事もありません。劉備と仲良くなる事は我等にとっても良い事です」


曹操の父親である曹嵩は現在、徐州の東北部にある瑯耶郡に住んでいる。曹操は劉備に曹嵩を兗州の国境沿いまでの護衛を依頼する文書を送った。劉備はすんなり了承し、無事に兗州の国境に送り届けた。


豫州 許昌


「陶謙様に御報告」


「どうした闕宣」


「曹操の父親 曹嵩が徐州の劉備の配下に護衛されて兗州に向かうようです」


「だから どうした」


「先の戦で我等は多くの同胞を失いました。これは曹操に対する報復の好機です」


「だが彼の父親を殺した所で何の価値もない」


「彼は兎も角、彼と共に移動する多くの財には価値があります」


「だが劉備軍が護衛に就くのだろう」


「兗州に着いた時を狙います。これなら劉備軍と遺恨は残りません。曹嵩も安心しきっているでしょうから簡単に襲えます。」


無事に兗州に着いた曹嵩一行。護衛の劉備軍とも別れ、曹操の待つ鄄城へ向かう。

だが、曹嵩一行を正体不明の部隊が襲い掛かった。当然、防ぐ手立てはない。護衛を引き受けた劉備軍は既に徐州に引き返しており、曹操の迎えの部隊も来ない。曹嵩自身が断っていたからだ。それに曹操も領地内から完全に賊を殲滅したと思っているので曹嵩が襲われる心配もしていなかった。到着の遅い曹嵩を心配した曹操が自ら迎えに行って目撃したのは変わり果てた姿の曹嵩だった。


「なんてことだ!父上が」


「賊は全て殲滅したとばかり」


「賊ではありません。豫州の兵です」


「それは本当か?」


「豫州に放った間者からの報告によれば許昌に大量の財が運び込まれたとか」


「賊の犯行に見せかけたのか」


「お前達 急ぎ戦の準備をしろ」


「いけません。証拠がないのだから」


「親を殺されて黙っていられるか!」


後日 曹操軍は豫州に攻め込んだ。


「一人残らず殲滅せよ!」


豫州軍も奮戦したが既に曹操軍は許昌の目前まで迫っている


「流石に強いな曹操軍」


「関心している場合か」


城壁から曹操軍を見おろしていた劉掞に声を掛けたのは豫州別駕の陳羣


「そもそも、貴殿が陶謙殿を止めないからこんな事に」


「仕方なかろう。今の陶謙様のお気に入りは闕宣なのだから」


「そのお気に入りはこんな時に何処で油を売っている?」


「もうアイツはこの世にはいない」


「!!」


「陳到も我慢の限界だった様だ」


「そう云えば先の戦で彼の部隊も大きな被害を受けましたからね」


「さて このままでは此処も落とされるのは時間の問題だ」


「陳羣殿 あれを」


許昌 城外 曹操軍


「此処も直ぐに落としてやる」


曹操軍の猛攻が始まろうとしたその時、後方に劉備軍が現われた


「そこまでだ!」


「お前達、やり過ぎた」


「劉備軍か! 邪魔をするな!」


「曹操殿、親を失って辛いのは分かるが何故、無関係な民を撒き込む?貴殿の行いは御父上を殺した賊より劣る行為だ」


「陶謙に思い知らせてやるんだ。自身の行いがどれだけ愚かなことか」


そして両軍は激突 城内の豫州軍も加わり大混戦となったが、日が落ちても決着が付かなかった


曹操軍 駐屯地


「流石に手強いな」


「だが見てろ、劉備 明日は陶謙のついでに貴様の首も討ち取ってやる」


そんな決意をした曹操の元に兵士が飛び込んで来た


「曹操様!一大事です」


「何だ?」


「兗州が呂布に落とされました」


「何だと?」


「まさか本拠地を落とされるとは」


「急ぎ撤退の準備を」


「だが奴等はどうする?この事を知られては」 


「急ぎ劉備に使者を出せ「頭が冷えた。私が間違っていたと」奴等も我々が退けば文句はあるまい」


曹操は即座に使者を立て豫州から撤退する事を告げ、急ぎ兗州に戻った




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