第15話 赤兎馬の誘惑

呂布の部屋


「李粛と申される方がお会いしたいと来ていますが」


「何? 李粛 彼と会うのは久しぶりだな。 よし、通せ」


「やあ、奉先 久しぶりだな」


呂布は直ぐに自室に案内する


「しかし、どうして急に?」


「ちょっとした お使いだよ。主に頼まれて君に届け物をね」


「届け物? 俺に? それに誰だ?君の仕える主は」


「届け物はあれだ」


李粛の指さす先には一頭の馬


「あれは・・・赤兎馬?」


「そうだ」


「確か赤兎馬の持ち主と云えば」


「私が仕える董卓殿だよ」


「一体 なぜ 董卓殿が 私は丁原の息子だぞ」


「董卓殿は常に自分が赤兎に乗るのに相応しくないと仰っていてな。赤兎は立派な将軍が乗るべきだと。そう言って随分と赤兎に相応しい人物を探していたらしい」


「その将軍が俺だと」


「そうだ。君を見て随分嬉しそうにしていたぞ」


「しかし、受け取る事は出来ん。董卓殿から贈り物を受け取った等とバレては父に何を言われるか」


「何故 父の事を気にするんだ。これは君に対する個人的な贈り物だぞ」


「父には拾われた恩がある。機嫌を損ねる訳には」


「ハハッ 贈り物一つで機嫌を損ねるなら丁原も大した人物ではないな。内の主の董卓殿とは大違いだな」


「おい、仮にも息子の前で」


「丁原はお前を息子などとは思ってはいないぞ。彼は君を道具としか思っていない」


「そんな事は無い」


「勿体無いな。君ほどの人物が家畜同然の扱いを受けているとは」


「家畜だと」


「そうだ。丁原が執金吾に成れたのも君の手柄があってこそ。丁原は君を飼い殺しにしているんだ。君がどれだけの手柄を立ててもそれは全て丁原の物になる」


「それは・・・」


「手柄は他人の為に挙げるものじゃないだろ。丁原の元にいては折角の君の武勇が台無しだ。折から出るなら早い方がいい。」


「・・・」


翌日 呂布は丁原の首を持って董卓の前に跪いた


一方 呂布が李粛を自室に招いていた頃、劉備の元にも来訪者がいた


「どうした? 子方」


劉備の前には 麋竺の弟の麋芳


「急ぎ 徐州へお戻りください。太守が、御父上がお亡くなりに」


「なんと! それは実か 麋芳」


「残念ながら 事実です。お二人共、急ぎ帰京の御支度を」


「そうか まぁ どうせ洛陽には居ずらくなるだろうからな」


劉備は急ぎ洛陽を抜け出した






  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る