第44話 お尋ね者
「冒険者ギルドは初めてですか?」
リーンの事が気になったので、受付で詳しく聞くことにした。
「初めてです。依頼の事で聞きたいことがあるんですが?」
「ギルドの情報は冒険者ギルドに登録しないと利用できません。」
「どうやったら登録できるんですか?」
受付に座っているお姉さんは用紙を1枚取り出した。
「こちらに必要事項を記入していただくと仮登録が完了します。そのあと依頼を1つこなしていただければ本登録となります。」
必要事項の欄には、名前と年齢を記入する欄があった。その下には選択式の質問があった。
ジョブを選ぶというものだった。
ジョブは勇者、戦士、魔法使い、魔法剣士、僧侶、薬師、忍者、吟遊詩人、学者、召喚術師、
「このジョブはどのようにして選ぶのですか?」
「自己申告で構いません。後に変更していただくこともできます。パーティーを組みたい人がいたら、そのジョブを参考にしてパーティーメンバー申請をする人もいます。」
仲間を探すときに使われるという事か。ひとまず、魔法剣士のところに〇をしておいた。
あとは経歴や、これまでにした事などを書く欄があったが、ひとまず白紙にしておいた。
「記入が少ないと、仲間の申請が来にくくなりますが、宜しいですか?」
ひとまず、仲間は必要としてないので全然構わなかった。
「じゃあ、それでお願いします。」
用紙を受け取ったお姉さんは、なにやら魔法の道具のようなものを使ってカードを発行してくれた。
「そのカードは南の大陸にある冒険者ギルドで有効になります。では、頑張ってください。」
申請は意外なほど簡単に済んだ。
「早速なんですけど、エルフ捕獲の依頼について詳しく教えてほしいんですけど。」
お姉さん紙の束を何枚かめくって、1枚の紙を取り出した。
「そちらは、バロワ商会の依頼になります。凶暴なエルフが出たので、捕まえてほしいとのことです。今日、バロワ商会の者が何人か犠牲者が出たので、ギルドへ応援の依頼が来たようです。」
一緒に航海をしていたが、そんなことをするようには思えなかったので別のエルフかもしれない。でも、似顔絵がそっくりだったのが気になった。
「町を出て東にあるブーノの森にエルフは逃げていったので、その森を捜索してほしいとのことです。」
「わかりました。ありがとうございます。」
ひとまずブーノの森に行ってみることにした。
できれば先にエルフを見つけて、事情を聞きたかったが、それは叶わなかった。
森の入り口付近で馬と数人の人だかりができていた。馬2頭の後ろには檻がついていた。どうやら、エルフをその中に入れようとしているところだった。
そして、そのエルフはリーンに間違いなかった。俺はそこに近づいた。
「ちょっと、すいません。そのエルフは知り合いなんですけど、何があったんですか?」
俺はひとまず事情を聞こうとした。
「アギラ~。」
リーンは俺に気づいて泣いていた。何か首のところに首輪がつけられていた。
「あー、なんだてめぇは?このエルフと知り合いなのか?」
「ええ。人を傷つけるなんて何かの間違いでは?」
「こいつがウチのもんを魔法で攻撃しやがったんだ。」
「違うよ。先に手だして来たのはこいつらだよ。」
泣きながらリーンが俺に訴えている。
「ああ言ってますけど。」
「黙れ!このエルフは奴隷になることが決まってるんだ。余計なことを言うんじゃない。」
俺は、少しの間一緒に旅したリーンの言い分を信じることにした。しかし、できることなら話し合いで解決したかった。
「双方の言い分が食い違ってますし、ひとまず解放してあげては?奴隷はひどすぎると思います。」
「何言ってるんだ。お前。エルフを捕まえて奴隷にするのは当たり前だろ。」
後ろにいた男が口をはさんだ。
「どうせエルフを横取りしようとしてるんでしょう。私たちが追い払いましょうか?」
袋を受け取っていた男が提案する。その後ろにいた3人の仲間と思われるものが身構えた。
リーンを捕まえた冒険者たちであろうか。
4人の冒険者たちと、檻の周りにリーンを受け取った5人の男がいた。
9人か・・・
どうやら向こうはやる気らしかった。
「アーサー危ないから隠れてろ。」
「わかりましたにゃ。」
空間に亀裂が入り、その中へとアーサーが消える。
「時空魔法だと・・・」
冒険者の一人が驚きの声をあげる。あれ、アーサーの魔法はレアなのか?
そんなことを考えていると、1人の男が俺に切りかかった。
『
『
俺は普段から
今回は人数が多いので、重ね掛けをした。
男の剣はスローモーションで俺に切りかかっている。
俺は男の後ろに回り、手刀を首におろした。手加減はしたが、その男は、膝から崩れ落ちた。
その動きを誰も目で捉えることはできなかった。
「そんな・・・」
「いつの間に後ろに・・」
「瞬間移動か・・・」
「びびるな、相手は一人だ。やっちまえ。」
俺は同じ要領で、次々に背後に回り、気絶させていった。
袋を渡していたリーダーらしきものを1人残しておいた。全員を連れて帰ってもらわねばならないからだ。
「まだやる?」
「くくく、どうやら速さが自慢のようだな。」
1人でもまだやるつもりらしい。
腰につけていた袋から何かを取り出した。
それは銃の形をしていた。
南の大陸には銃が存在するのか?
「この武器を見たことあるまい。最近、遺跡で発掘されたものだ。お前がいくら速かろうと、これは避けれまい。」
銃口を俺に向けて引き金を3、4回ひいた。
『
少し焦ったが、弾丸の軌道を見ることができた。
全ての弾丸を躱し、背後に回って、最後の1人に手刀を打ち込んだ。
「な、バカな・・・」
最後の1人もその場に倒れ、気絶した。
俺はリーンに近づいた。リーンは目を開いて驚いた顔をしていた。
「アギラ・・・あなた強かったのね。」
そう言うと、安堵したのか、リーンは眠りに落ちた。
どうやら魔力切れのようだった。
俺は気絶したもの達を檻の中に入れておいた。
『さて、これからどうしようか。』
もしかすると、俺がお尋ね者になってしまったかもしれなかった・・・
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