トップテクストの話
鯉々
アレ
やあ、初めまして。「初めまして」っていうのは初めて会った人に対する挨拶のことで、英語では「Nice to meet you」、中国語では「初次见面」って言うんだ。それで・・・。
ゴメン、話が逸れたね。僕の名前は・・・まあ「トップテクスト」とでも呼んでくれ。皆僕のことをそう呼ぶんだ。理由はよく分かんないけど。
それでまあ、僕が今日何を話したいかというと、僕の身の周りで起こった不思議な事件の話なんだ。僕の周りの皆はもう駄目になっちゃったから君だけでも、この話を覚えておいて欲しいんだ。
まず、事の始まりはある日の朝だった。僕はいつもみたいに朝起きて、朝食を食べるために一階へ降りたんだ。あっ、僕の家は二階建てだよ。僕の親父がローンで建てたんだ。話を戻すけど、僕たちは最初はいつも通り朝食を食べてたんだ。朝食は食パンだったかな。どうでもいいか。で、親父が言ったんだ。
「おい。今日は学校であるんじゃないのか?アレが」ってね。僕は最初何の事か分からなくて聞き返したんだ。
「アレって何?」ってね。するとお袋がこう言ったんだ。
「あら、忘れたの?あなたずっと言ってたじゃない。アレよ」
二人とも「アレ」って言うせいで僕には何の事かさっぱり分からなかったんだ。でも、学校に行く準備をしている最中に思い出したんだ。
「そうだ。今日は文化祭の準備をする日だ!」ってね。
学校の始まりは寺子屋だと言われてるんだけど・・・ゴメンゴメン。とにかく僕は急いで学校へ向かったんだ。クラスでは全員じゃないけど既に大多数が集まってて、準備を始めていた。すると、学級委員長が僕にこう言ってきた。
「あっ、おはよう。早速で悪いんだけど近くのスーパーでアレ買ってきてくれる?」
まただよ。アレって言葉。まるで暗黙の了解みたいにさ。ちゃんと言ってくれなきゃ分からないのにアレって言われる。この時点で僕もおかしいとは思ってたんだけど、一応他の皆にも聞いて見ることにしたんだ。
「ゴメン、佐伯君。アレって何だろう?」
「あぁ?アレって言やぁアレだろ?」
「三原さん。アレって何の事?」
「何言ってるのトップ君?アレはアレだよ」
僕はすっかり頭が痛くなっていた。皆してアレ、アレって。まるで皆で僕のことをからかってるみたいだった。とにかく、このままじゃ埒が明かないからとりあえずスーパーに行ってみることにした。
ここで言う「スーパー」っていうのは「スーパーマーケット」のことだよ?スーパーに着いた僕は一通り店内を見て回ることにした。野菜?魚?肉?お菓子?どれもピンと来なかった。だって僕のクラスがやるのは喫茶店だ。茶葉やティーバッグはもう買ってあったし、机や椅子は学校のものを使えばいい。散々悩んだ末に、ようやっと僕はアレに気付いたんだ!そう!砂糖だよ!紅茶やコーヒーに入れるのに使うんだ!前に茶葉とかを買った時に忘れてたんだよ!僕は頭のモヤモヤが晴れてルンルン気分でレジへと向かったんだ。前の客が会計を済ませた。今度は僕の番だと思ってレジに並んだ時に、僕の中にあった不確かな違和感は確信に変わった。
「・・・・・・・・・」
レジの店員が何にも喋らないんだ。普通は「お次の方どうぞ」とか言うもんでしょ?店員は黙々とレジを打っていくもんだから、僕は急いでお金の準備をしたんだ。その後も店員は何にも言わなかった。僕の後に来た客にも無言で接客をしてたんだ。しかも客まで無言だ。幾らなんでもおかしいだろ?僕は周りの人間に道を聞く振りをして話かけてみた。驚くほどの静けさだったよ。スーパーの中の電灯の音がはっきり聞こえるほどだった。でも、僕が最も驚いたのは、相手が伝えようとしていると思しき事柄がいつの間にか頭の中に入ってきていることだったんだ。僕以外、誰も声を発していないのに。怖くなった僕はそこから逃げ出し、電車やバスに乗ってここに来て、こうして君にメッセージを送った。
さて、ここまで話したんだ。聡明な君ならどうするべきか分かるよね?僕は君を信じてるよ。アレを抑えられるように周りの皆に呼びかけて欲しい。そうしないとこの地球はアレに
BOTTOM TEXT
トップテクストの話 鯉々 @koikoinomanga
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