第10話:恐怖のカボチャオバケ!

10月末の金曜日の放課後。佐々木ささきはいつにも増して、テンションが高かった。

「おい!割下わりした、日曜はハロウィンだぞ!」

割下と佐々木が住む町の商店街では、10月最終日曜日にハロウィンの企画として、仮想した子どもたちにお菓子などを配るイベントが有るのだ。


「佐々木くんは、今年はどうするの?」

眼鏡の少年、割下が答える。

「俺か?今年は狼男だ。仮装セット買ったんだ」

「……それ、もらえるお菓子より高くなかった?」


割下が、眼鏡の奥からじーっと佐々木を見る。

「い、いんだよそういうのは!雰囲気が重要なんだよ!」

佐々木は笑ってごまかした。

「それはそうと、お前は準備できてるのか?」


とっさに話を変える佐々木。こういうときに佐々木の切り替えは素早い。

「土曜日に何か買おうかなとは思ってる」

今日は金曜日、商店街のハロウィンは明後日だ。

「よっしゃ!それじゃ日曜にな!」


――――――――――


そして日曜日の午後2時ごろ!商店街入り口には、狼男の仮装をした佐々木が、割下を待っていた。中学生になって初めてのハロウィンだ。佐々木はちょっとそわそわしていた。

「おまたせ、佐々木くん」


佐々木の背後から割下の声。

「おう、割下……ってなんだそのりゃ!?」

割下の姿は、黒い三角帽子とマント、そして箒。つまり魔女だ。

「えへへ……もうこれしか残ってなくって……」

割下は帽子を目深に被り、上目遣いで佐々木を見る。


「えへへって、お前、恥ずかしくないのかよ」

「そ、そりゃあちょっとは恥ずかしいけど、いつものアレで慣れてるっていうか……」

「あー……」

割下の言葉に、佐々木も納得した。


アレとはなにか?割下と佐々木は、プリケッツの魔法によって、割り箸を割ることで、魔法少女装少年セイントヒップとセイントリングに変身できるのだ!そして、悪いクッキングモンスターをやっつけて、ケツ割り箸で悪霊を成仏させることができる!


セイントヒップとして戦い始めてからもはや半年。こういう格好は、慣れていると言えば慣れているし、セイントヒップの格好に比べれば、魔女衣装の恥ずかしさレベルは大きく低い。


「まあ、いいや!お菓子貰いに行こうぜ!」

こういう時の佐々木の切り替えは素早い。

「うん!」


……商店街は、様々な仮装をした子どもたちと大人たちで賑わっていた。割下や佐々木のクラスメートもちらほら見える。店や街灯はオレンジと黒のハロウィンカラーでデコレーションされ、ジャック・オ・ランタンが置かれている所もある。今日は、いつもの商店街とは違ったお祭りの雰囲気がある。


割下と佐々木は、まず本屋にやってきた。

「「トリック・オア・トリート!」」

狼男佐々木と魔女割下は、声を揃えてお菓子を要求する。


「はい、カッコイイ狼男に、カワイイ魔女さん」

店員のお姉さんが現れ、二人にキャンディーを渡してくれた。

「カワイイ……」

割下は、お姉さんの言葉を反芻する。



「あら!ごめんなさいね!魔女の格好だったから女の子かと思っちゃったけど、魔法使いさんだったのね。お詫びにもう1つ、キャンディーあげる」

「い、いや、いいんですよ!その、慣れてるんで……ってああ、いや!なんでもないんです!」

割下は佐々木の手を掴んで、逃げるように走り去った。


……その後もいろいろな店を回るたびに、割下は女の子に間違えられたりした。どうやら今年は、魔女の仮装をする女の子が少なく、より目立つらしい。それもそのはず。何故ならば……。

「ねえ、佐々木くん、気づいた?」


「気付くもなにも、いっぱいいるじゃん!」

……何故ならば、セイントヒップとセイントリングの仮装が多いからなのだ。もちろん、本家より露出控えめである。


「僕たちって、あんな格好で戦ってるのかな」

割下が佐々木にコソコソ話す。

「あー、まあ、そうだろうな」

佐々木も割下にコソコソ話す。


セイントヒップとセイントリングの格好は、つまるところ魔法少女である。13歳の少年である割下と佐々木にとって、恥ずかしくないわけがなかった。客観的に見ると、いつもは意識しなかった部分が見えてきて、まるで鏡でまじまじと自分の姿を見ているような錯覚に陥る。


「まあ気にすんなよ!今日はハロウィンだぜ!?俺たちのカッコだって、そんなにみんな気にしちゃいねえんだからさ!」

佐々木は笑った。こういう時の切り替えの速さは、割下を元気付ける。

「うん、そうだね」

割下は笑顔で返した。


「……あ!割下くんと佐々木くんじゃない!」

二人の背後から聞き覚えのある声がした。

折部おりべさん!」

「よう、折部!」

二人が振り返ると、同級生の折部がいた。


((折部さんは女の子で、割下くんは彼女のことが好きなんだ。だけど、その思いは伝えられていないんだよ))


「割下くん、おそろいだね!」

そう言う織部も、魔女の衣装を着ていた。

「う、うん。でも、変じゃない、かな……?」


割下は自信なさそうにうつむいて答える。

「だってこれ、お、女の子用の衣装だし……」

その言葉を聞いて、折部は笑って答えた。

「いいじゃない!別に!」


「いいって、どういうこと?」

「だって、ハロウィンの仮装なんだよ。女の子だってミイラ男とか狼男とかになりたいし、男の子が魔女だって、なんにもおかしくないじゃない」

折部の言葉に全く嘘はない。

「それに、さ」


「それに……?」

「割下くん、似合ってると思うよ。こう、カワイイ感じ!」

「か、カワイイって……」

割下は帽子を目深に被り、赤くなった顔を隠そうとする。と、ここで佐々木がひらめいた。


「割下、折部、二人の魔女で揃って写真取ってやるよ!」

「ありがとう!割下くん、こっちこっち!」

佐々木の陰に隠れようとしていた割下は、折部に引っ張られ、横に並んだ。


佐々木はスマートフォンのカメラを構える。

「よーし、並んで。おいこら割下!帽子もうちょっと上げて、顔見せろ!」

佐々木の要求を飲んで、割下は帽子の角度を変えた。

「はい、いいよー。それじゃあ笑って!」

佐々木の声に、折部が笑う。割下はそれを横目で見てから、カメラの方を向いて笑った。


カシャッとシャッターが切られ、二人の写真が撮られた。

「おーい!折部ちゃん!こっちこっち!」

遠くから、折部を呼ぶ声がする。

「もう行かなきゃ!後で写真送ってね!」

折部は友達の方へと走っていった。


――――――――――


一方その頃、商店街の隅っこの方では。

「ワルワツワル~。今日はうまいお菓子がいっぱいだワルな~」

上機嫌でかぼちゃプリンを食べているのは、ワルノワール。黒くて目付きが鋭いマスコットだ。何を隠そう、こいつがクッキングモンスターをと繰り出す諸悪の根源なのだ。


「ふっふっふ、それじゃあ今日も、大悪霊復活と捕獲を目指して、町を混乱で包むワル!行くでワル!」

「ええ、そうましょう。かわいいワルノワールちゃんのためですもの」

背後の影に潜むレディが、ニヤリと笑った。


----------


しばらくして、割下と佐々木は、一通りお菓子回収を終えていた。

「今回は思ったよりたくさんも貰えたね」

「ああ、お前のおかげかもな」


佐々木が笑う。割下が女の子と間違われることが多発し、お詫びのお菓子もいっぱい貰ったのだ。

「それじゃあそろそろ帰って……」

二人が帰ろうとした、その時だ。


「キャーッ!」

「うわーっ!」

頂点街中心から悲鳴!


「プリプリ!悪霊の気配だプリ!」

マスコットのプリケッツが悪霊を感知!


((プリケッツはピンク色のぬいぐるみみたいなマスコットで、ワルノワールを捕まえるためにこの世界にやってきたんだよ二人に魔法の力を与えたのもプリケッツなんだ))


「行こう、佐々木くん!」

「ああ!」

二人は商店街を抜け出し、人気のない路地裏に走り込む。そして、カバンに忍ばせていおいた魔法の箸箱を取り出す。割下のものはピンクで、佐々木のものはイエローだ。二人は中から割り箸を取り出し、そして、割り箸を割った!


パキン。


『パパラパ~チャララパパラパ~♪パッパラ~パパラパッパッパラ~♪』

変身BGMが鳴り響く!割下と佐々木の体が宙に浮いて体が光に包まれ、変身バンクだ!割下の全身が光のシルエットになり、半ズボンがはじけ飛ぶ!そして代わりに黒いスパッツが装着される!


佐々木も全身が光のシルエットになり、スニーカーががはじけ飛ぶ!そして代わりに装着されるのはカウボーイブーツ!


割下の上半身のTシャツがはじけ飛び、フリフリの淡いピンク色ドレスみたいな服が装着される!レースの手袋にニーソックス。ちょっとだけヒールが高い靴。髪の毛はリボンで結ばれる。メガネも魔法で形が変わる。


佐々木のズボンとTシャツがはじけ飛び、ショートパンツ、胸下で縛られたへそ出しTシャツ、そして茶色いカウガールジャケットが装着される!腰には二丁のガンベルト。手にはレザーのグローブ。首元にはスカーフ。頭にはテンガロンハット。


そして最後に、割下には黒いスパッツの上から白いフンドシが、佐々木には蛍光イエローのバイザーサングラスが装着される!


『パパラパ~パパパッ♪パッパン♪』

BGM終了!割下はセイントヒップに、佐々木はセイントリングに、それぞれ変身完了!

「よし!行くぞ!」


――――――――――


「うわーん!」

「怖いよー!」

ヒップとリングが到着した商店街中心では、小さな子どもたちが怯えて泣き叫んでいた。それもそのはず!巨大なジャック・オ・ランタンのクッキングモンスターが現れていたのだ!

「カボーッ!」


「よっしゃ!俺たちが来たからにはもう安心だぞ!」

「あ!セイントリングだ!」

泣いていた小さな子供に笑顔が戻る。

「よーし、早く逃げな!」


「ありがとう、セイントリング!」

だが、そう簡単に子供を逃がすモンスターではない!

「カボーッ!」

カボチャモンスターが逃げる子供に突進!


「そうはさせるか!」

セイントヒップが割り箸型魔法少女ステッキでカボチャモンスターを弾き返した!

「カボーッ!」

弾かれたカボチャモンスターは器用に着地!


「リング!割り箸は?」

「えーっと……」

リングはサイバーゴーグル越しにカボチャモンスターを睨む。


リングのサイバーゴーグルは、敵の弱点を見抜く魔法の力がある。クッキングモンスターの弱点、それは、体のどこかに刺さっている割り箸だ。

「あった!カボチャの中だ!」

サイバーゴーグルが、カボチャモンスターの中心にWEAKの文字を表示!


「じゃあ、カボチャの中に潜り込んで割り箸を取っちゃえば……」

「オーッホッホッホ!そう履きませんわ!」

突然の高笑い!ヒップとリングは笑い声の方を見上げる。

「その声は、レディ・パン!」


そこにはダークセクシーエプロン魔女服に身を包んだレディ・パンの姿が!その目元は、マスカレイドマスクに覆われていて正体は不明!

「オーッホッホッホ!今回のモンスターは特別製よ!」

得意気に笑い、カボチャモンスターの真上に飛び乗った。


「ヘッ!特別製だ?オレたちは何度もお前が作ったモンスターを倒してきたんだ」

リングの言葉の通り、レディ・パンとワルのワルノワールが手を組んで生み出したクッキングモンスターは、これまでなんどもヒップとリングがやっつけてきた。


「今回もきっちりやっつけてやるぜ!」

リングが啖呵を切り、ヒップもステッキを構え直す。

「さあて、それどうかしら?お行きなさい!」

レディ・パンの号令で、巨大なカボチャモンスターの口から、小さなカボチャモンスターが数匹飛び出した!

「「「「チャーッ!」」」」


「それがどうしたってんだ!」

リングは腰のガンベルトから二丁の話ゴム鉄砲を抜き打ち!パシュン!パシュン!

「「チャーッ!」」

輪ゴムが当たった小さなカボチャモンスターが光の粒子となって消えていった。


リングの撃ち出す輪ゴムは、天使の金輪と同じ聖なる力がある。小さなクッキングモンスターなら、撃たれるだけで成仏してしまうのだ。だが、無限に撃てるわけではない。リングの輪ゴムは、魔法少女服の魔力を変換して撃っている。つまり、考えなしに連射してしまえば、いつかはケツ丸出しなのだ。


少しだけズボンが短くなったリングだが、まだまだ戦える!

「えーい!」

一方のヒップは、リングが撃ち漏らした小さいカボチャモンスターをステッキでホームラン!

「「チャーッ!」」


「どうしたどうした?いつもと変わらねえじゃねえか!」

「まだまだ、ここまではほんの小手調べよ。これからが本番ですわ!」

レディ・パンの声に合わせて、巨大なカボチャモンスターの口から何かが飛び出した!

「「「「ホラーッ!」」」」


巨大なカボチャモンスターの口から飛び出したものを見て、子どもたちが逃げ惑う!

「ギャーッ!オバケーッ!」

白いシーツに穴が3つ空いたような、オバケシーツだ!

「おいおい、それがどうしたって……」

「ぎゃーっ!オバケーッ!」

ヒップが悲鳴を上げて立ちすくむ!


「どうしたヒップ!?」

「お、オバケ……、こ、怖い……」

ヒップはガクガクと震え、リングにしがみついた。

「オーッホッホッホ!どうやら、そっちの子はオバケがとっても苦手なようね!」

レディ・パンはしたり顔で高笑い!


「ええい、見てろよヒップ、オバケなんて俺が全部やっつけてやる!」

リングが輪ゴム鉄砲を連続発射!オバケに全弾命中!だが!

「「「「ホラー……」」」」

オバケは消えない!


「な、どういうことだよ!」

うろたえながらも輪ゴム獣を連射!バシュンバシュンバシュンバシュン!しかし、何故かオバケは消えない!

「「「「ホラー……」」」」


「ち、ちくしょう……」

リングのホットパンツはもはや限界に達し、これ以上の射撃はケツ丸出しを覚悟せねばならない!

「あらあら?もう終わりなのかしら?それじゃあ、ハロウィンは私たちモンスターのものということで、よろしいかしら?」


レディ・パンが二人を見下ろす。子どもたちは逃げ惑い、大人たちですらその混乱に飲み込まれようとしている。このままでは、混乱の力で大悪霊が復活してしまう!

もう終わりか……みんながそう思いそうになった時だ。


一膳一閃いちぜんいっせん……剥箸はがしばし!」

乱入者の一閃!一瞬の閃光と静寂……オバケの布がはらりと取れ、小さなカボチャモンスターが長体を表した!

「「「「チャ、チャッ!?」」」」


「幽霊の、正体見たり、枯れ尾花……。ふたりとも、よく見ろ。これがお化けの正体だ」

その声は少年か、あるいは少女か、どちらにも聞こえる。目元は前髪で隠れて見えず、淡いブルーを基調とした侍魔法少年服の胸元は、サラシが巻かれている。

「キミは、セイントソード!」


謎の侍魔法少年服の戦士、セイントソードの登場だ!

「立てるか?セイントヒップ」

ソードがヒップに手を差し伸べる。

「あ……うん!」

ヒップは力強く手を握り返し、立ち上がらせてもらった。


「なるほどな。どうりで命中しても消えないわけだぜ」

リングは状況を知った。リングが狙っていたのはシーツの部分であり、そこにいくら当てても本体のモンスターにはヒットしていなかったというわけだ。

「そうと決まりゃあ、これでもくらいな!」

輪ゴム発射!

「「「「チャーッ!」」」」

消滅!


「ええい!またしても現れたなセイントソード!」

レディ・パンがソードを睨み、腰の調理器具ホルダーから計量スプーンを2つ取り出す。すると、なんということか。軽量スプーンは巨大化し、まるで巨大な2本の棍棒のような武器になったのだ!


対峙するソードも、腰から二本目の巨大な割り箸を抜刀する。大小二膳の巨大箸を構えたその姿は、まるで二刀流の武士そのものだ。二膳一流にぜんいちりゅうここにあり!


「そぉれ!」

飛び出したのはレディ・パン!右手のスプーンを冗談から大きく振りかぶり、ソードに叩きつける!

「はあっ!」

ソードはこれを左手の小箸で受け流し、右手の大箸で横薙ぎの攻撃!


「おっと」

レディ・パンはそれを左手のスプーンで受け、くるりと回してソードの大箸を跳ね上げる!

「させるか!」

すかさずソードはその勢いを利用して回転攻撃!


「ふん!」

レディ・パンは思い一撃を弾き飛ばし、バックステップして間合いを図る。二人の勝負は互角だ!


一方その頃リングは、ヒップの説得に全力だ!

「いいかヒップ、アレはオバケなんかじゃなくって、モンスター何だよ!だから怖くない。そうだろ?」

だが、ヒップの足は震え、巨大なカボチャモンスターを指差していた。

「だって、あれ……」


ヒップにとって、今や巨大なカボチャモンスターは、巨大なシーツオバケに見えていた。オバケの正体はカボチャモンスターだったというその現実が、ヒップに幻覚を見せているのだ。

「怖いんだようぅ……」

ヒップはリングにしがみついた。



「……なあ、ヒップ」

リングはできるだけ優しくヒップに話しかける。

「なあに?」

ヒップは涙目で答える。

「俺、小さい頃、ハロウィンが嫌いだったんだよ。その……オバケが怖くってさ……」

リングは恥ずかしそうに話し出す。


「え……?」

「いや、でもほら。今年のハロウィンは楽しんでただろ?だからその、なんっていうか……」

言葉に詰まるリング。

「もしかし、リングもオバケ怖かったの?」

「そ、そいうわけじゃねーけど!ま、まあ、いや、怖かったっつーか、その……」


「とにかく!小さい頃、俺はオバケの仮装してたやつにぶつかったんだよ。そしたら、なんつーか、ぶつかったってことは、オバケじゃないってことだろ?」

リングの力説に、ヒップは涙目で聞き入っていた。


リングは続ける。

「あのでっかいカボチャだって、レディ・パンが立ってたってことは、オバケじゃないんだ」

「オバケじゃ……ない……?」

「ああ、そうさ。おれたちなら、やっつけられる!」


リングの力強い言葉に、ヒップが立ち上がった。

「やっつけられる……!」

しがみついていた手を離し、自らの足で立ったのだ!

「ああ、そうさ!」


リングがヒップの目を見つめる。

「オレたちの必殺技をぶち込んでやろうぜ!」

「うん!」

答えるヒップの目には、もはや涙は流れていなかった!


「これでキメるぞ!」

リングが二丁の輪ゴム銃を合体させる!それは変形し、巨大なボウガンになった!

「もうオバケなんか怖くない!」

ヒップはステッキを巨大ボウガンにセット!それは変形し、巨大な矢となった!


二人は一緒に巨大ボウガンを構え、狙いを定める。

「しまった!」

レディ・パンが止めよう走りだずが、ソードがこれに割って入る!

「今だ、セイントヒップ!」

「はい!」


「ロックオン!」

リングが照準を固定!

「シュート!」

ヒップが発射トリガーを引く!

「「セイントアロー!!」」


二人の息のあった声で、聖なる矢が打ち出される!イエローの光を纏ったピンクの矢は、オバケの幻影を打ち破り!カボチャモンスターのど真ん中に命中!貫く!


カボチャモンスターの背中から飛び出したピンクの矢は、プリケッツに変身。プリケッツの手には邪悪な割り箸が!この邪悪な割り箸こそ、悪霊が宿ったモンスターの心臓部であり、これをヒップが聖ケツで折ることにより、モンスターを倒せるのだ!


「セイントヒップ!折るプリーッ!」

そのまま邪悪な割り箸をヒップに投げる!割り箸をキャッチしたヒップは、ふんどしに割り箸を挟む。スパッツの上に、白いふんどしと割り箸が、聖なる十字を表した!……そして!

「えいっ!」


バキィ!


割り箸が割れた!

「カ、カ、カ……」

カボチャモンスターが中から光りだす!そして!

「カボーーーーーーーーー!!!!」

カボチャモンスターは爆発!キラキラした光の粒子となって空へと登っていった。


「ええい!今回はここまでにしてあげますわ!それではごきげんよう!」

レディ・パンが突然白い煙に包まれる!小麦粉だ!

「ゴホッ!ゴホッ!」

ヒップとリングが咳き込む!煙が晴れた時には、もうレディ・パンは逃走していた。そして、ソードの姿も、そこにはなかった。


小麦粉が晴れ、静寂が訪れた。そして……

「「「「ワアーッ!」」」」

セイントヒップとセイントソードの仮装をした女の子たちが歓声を上げていた。



「ありがとー!セイントヒップのおねえちゃん!」

「セイントソードのおねえちゃんもかっこよかった!」

「すごかった!」

「ありがとう!」

それぞれの口から、感謝の言葉があふれる。


(プリプリ!そろそろ変身が解けるプリ!)

プリケッツの声が、二人の心に直接聞こえてくる。

「よーし!それじゃあみんな!ハロウィンを楽しんでくれよな!」

リングが手を振って、高く跳躍!

「みんな、応援ありがとう!」

ヒップも手を振り、リングの後を追った。


――――――――――


割下と佐々木は、人気のない林の中から出てきて、公園にいた。ハロウィンで商店街が賑わっている今、公園はほとんど人がいないのだ。

「おい、割下、さっき折部さんと取った写真だ」

佐々木は、割下のスマートフォンに画像を転送する。


その写真は、割下と折部、魔女衣装を着た二人の姿が写っていた。割下は恥ずかしいのか、笑顔が若干歪んではにかんでいるようにも見える。

「なんか、僕の顔、変じゃない?」

割下は不安そうだ。


「んなことねえよ。折部さんだって、よく撮れてるっていってるぞ?」

「え!?どういうこと!?」

割下が佐々木のスマートフォンを覗き込むと、そこには折部からのメッセージがあった。

『いい写真ありがとう☆』


「うわーっ!送っちゃったの!?」

割下は慌ててポカポカと佐々木を叩く。だが、佐々木は至って平穏に、それをニヤニヤ笑って見つめる。

「いーじゃねーか。思い出のツーショットだぞ?」

「んもう!佐々木くん!」


ひとしきりポカポカしたのち、割下はふくれっ面でうつむいた。

「むー……」

「ま、明日はこの話で持ちきりかもな?」

「んもー!この写真のことでなんか聞かれたら助けてよね!?」

割下が佐々木をじっと見つめる。

「ああ、安心しろよ。俺はお前の親友だからな」

佐々木は笑ったが、真剣な目で、そう答えた。



――――――――――


恐怖を克服して成長したヒップ&リング!折部さんとの関係も進んだかな?でもまだまだ先は長いぞ!



ケツ割り箸魔法少女装少年セイントヒップ

第10話:恐怖のカボチャオバケ!

おわり

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