第3話:新たな仲間!セイントリング!

「はーい!それじゃあお昼まで自由行動です。事前に決めた二人組で、しっかり動物観察をしましょう。12時になったら、この芝生広場に戻ってくること。いいですね?」

「はーい!」

先生の声にクラスのみんなが元気に答えると、それぞれ二人組になって散らばっていった。今日は課外授業で動物園にやってきているのだ。


(今日も割り箸持ってきてるプリ?)

割下わりしたの心の中に直接話しかけてくるのはプリケッツ。ヌイグルミみたいなマスコットで、いつもは姿を隠すために透明になっているよ。

(大丈夫だよ。ちゃんと持ってる)

割下も心の中で答える。割り箸に封印されていたプリケッツをケツで折って開放した割下は、割り箸を割ることで、ケツ割り箸魔法少女装少年セイントヒップに変身できるようになったのだ。


(それならオイラも安心だプリ)

(この前のピザモンスターのときみたいに割り箸を探すのはもう嫌だからね)

ピザモンスターをやっつけてから、もう1ヶ月。他にも何体かのモンスターを倒してきた割下は、いつでもセイントヒップに変身できるように割り箸を持ち歩いている。


「よう!割下!」

「うわあ!」

友達の佐々木ささきの声にびっくりする割下。

「どうした?なんか考え事か?」

セイントヒップは、何度もピンチを佐々木に助けられている。ときには、ケツとフンドシの間に割り箸を挟んでもらったこともあった。そのことを思い出すと……やっぱりちょっと恥ずかしい。


「あー、いや。べ、別に!」

「ふーん、それならいいけど。じゃあ、昼飯の時にまたな!」

「うん。また後で!」

佐々木は今回は別の組だ。割下と別れて走っていく。


「割下くん、私達も早く行こう」

割下に声をかけてきたのは折部おりべ。運動神経抜群の女の子で、いつも元気いっぱいだ。

「うん。えーと、折部さんは何から見たい?」

「私はねー、ヒツジがいいかな」

「それじゃあ行こうか」


――――――――――


「めぇ~」

「あ、ヒツジだよ!」

折部に半ば引っ張られるようにやってきたのは、ふれあい広場だ。今日はヒツジが何匹か、柵の中でのんびりしている。


「ねーねー!早く入ろうよ!」

折部の目はキラキラと輝き、ヒツジに夢中だ。

「う、うん。飼育員さん、僕たちも入っていいですか?」


「ああ、もちろん!さあ、どうぞ。ヒツジさんたちを驚かせないように、ゆっくり近づいてね」

飼育員さんが柵を開けて、割下と折部を中に入れてくれた。


「折部さん、そーっと、そーっと……だよ?」

「ふふ、わかってるよ……そーっと、そーっと」

割下と折部は、座り込んでいるヒツジにゆっくりと近づいていく。そして……羊の毛に触った。


「うわ……フッカフカだぁ……!」

折部は夢中で羊の毛を撫でている。

「うわあああ、ふわふわ……ふっかふっか……」

羊の毛に手を突っ込んだり、揉んでみたいり、じっくりと毛皮を堪能している。


一方、割下はというと、そんな折部を後ろから眺めているだけだった。

「割下くんも触ってみなよ。すっごいよ!フカフカなの!」

「あ、うん……」


割下が恐る恐る毛皮に触れる。

「うわ、すごい」

「ね?でしょ?」

「うん、すっごい……」

最初はちょっと怖がっていた割下も、折部と一緒にヒツジをフカフカしていた。


だが、穏やかな時間が過ぎようかと思っていたその時だ!

「めぇ~ッ!!」

突然1匹のヒツジが暴れだした!偶然にも空から急降下してきた鳥に驚いたのだ!


「めぇ~ッ!!」

ヒツジはそのまま一直線に割下と折部に向かって走る!距離はまだあるが、このままでは追突だ!

「うわわわわ!」

うろたえる割下!

「……っ!こっち!」

折部が割下の手を引いて走り出す!


割下は折部に引っ張られるように走りる。その先には山積みになった干し草のブロック!

「これに登って逃げよう!」

折部は繋いでいた手を離し、大きく加速!そのまま干し草ブロックの手前で大ジャンプ!跳び箱の要領で軽々とてっぺんに登った!


「割下くんもはやく!」

「で、でも僕はそんな高く飛べないし……」

戸惑う割下!

「めぇ~ッ!!」

後ろからは暴れヒツジ!

「いいから飛んで!手を伸ばして!」

「……わ、わかったよ!エーイ!!」


割下が手を伸ばして思い切ってジャンプ!その手を折部が掴み、引っ張り上げる!

「よいしょっ!!」

引っ張り上げられた割下は、そのままの勢いで折部に抱きかかえられた。

「めぇ~ッ!?」

一歩遅れてヒツジが干し草ブロックに突撃!そのまま目を回してふらふらと倒れた。


「「ハァ……ハァ……ハァ……」」

折部と割下の息は荒い。お互いの心臓の音が、ドキドキと聞こえてくる。

「……あ!ご、ごめん!」

慌てて起き上がるのは割下。


「ふふ。それを言うなら、ありがとう、でしょ?」

(ああ、やっぱり折部さんはかっこいいし、それに可愛い……)

「ん?どうしたの?大丈夫?」

ちょっとぼんやりしていた割下が、ハッと我に返ってが起き上がる。

「だ、大丈夫だよ!!あ、ありがとう!!」

お礼をいうと、飼育員さんがやってきてくれて、二人を柵の外に案内してくれた。


――――――――――


お昼ごはんの時間。クラスのみんなは芝生広場でお弁当を食べて、しばし休憩となった。割下と佐々木は、二人で木陰にいた。

「で、割下。折部さんとはどうだったんだよ?ん?」

「ど、どうって言われても、別に」


「おいおい、せっかくのチャンスだったのに、なにもしなかったのかよ!手ぇ繋いだりとかさ?」

割下が折部を好きなことは、佐々木も知っている。当然、二人だけの秘密だ。

「うーん、それは、その、あったというか……」

割下はヒツジに追われたときのこと思い出し、ちょっと顔が赤くなった。


「お、なんかあったんだな」

佐々木はニッコリと笑う。

「フフフ。いつまでも遠くから見てるばっかりじゃダメだぜ。もっと自分からガッといかないと」

「佐々木くんみたいに、困ってる相手を助けてあげたり?」

割下は、ピザモンスターと戦っている時に佐々木に助けられたことを思い出した。


「あーそうさ。俺みたいに……って、ん?俺、そんなこと話したっけ?」

「ほ、ほら!この前セイントヒップを助けた話してくれたじゃない!」

「あー、そういやそうだったな」


「おーい!佐々木!割下!フリスビーやろうぜ!」

遠くから聞こえてくるのはクラスメイトの声だ。


「おーう!」

「あ、僕はトイレ行ってくるから、先に遊んでて」

「ああ、わかった!」

佐々木はクラスメイトのところに走り、割下は少し離れたトイレへと向かった。


――――――――――


佐々木がクラスメイトと遊び始めてからすぐのことだった。

「ん?なんだあれ?」

佐々木が空を見上げると、巨大なフリスビーが浮かんでいた。いや、あれは……フリスビーではない!


「UFOだ!」

「え!?UFO」

「UFOだって?」

佐々木の声にみんなが空を見上げる!


UFO、いや、それは空飛ぶ巨大なパンケーキモンスターだ!

「パパパパパパパパ……」

奇妙な音を立てながらジグザクに飛行するパンケーキモンスター!下部ハッチが開くと、小さなパンケーキがたくさん飛び出した!

「「「「「パパーン!!」」」」」

パンケーキが佐々木達に襲いかかる!

「ウ、ウワーッ!」


――――――――――


一方その頃、割下の方では!

(プリプリ!佐々木くんたちの方から悪霊の気配を感じるプリ!)

プリケッツが悪霊の気配を感知!


「大変だ!」

割下は再びトイレに戻り、個室をロックして割り箸を割る!個室からピンクの光が漏れ出し、扉を開けて飛び出してきたのはセイントヒップだ!

「よし、行くぞ!」

大きく地面を蹴って大ジャンプで友達を助けに駆け抜ける!


----------


「みんな!大丈夫!?……ってあれ?」

駆けつけたセイントヒップを待ち構えていたのはいつもの大混乱ではなく、ふかふかのパンケーキで眠っているみんなの姿だった。人をダメにするソファならぬ、人をダメにするパンケーキだ。


「えーっと……」

モンスターを探してあたりをキョロキョロするセイントヒップ。だが、その姿は見当たらない。それもそのはず、巨大なパンケーキモンスターは真上にいたのだ!


「パパーン!」

セイントヒップの死角から小さなパンケーキが襲いかかる!このままセイントヒップもダメになってしまうのか!?


「危ない!」

「キャッ!」

突然突き飛ばされるセイントヒップ!

「佐々木くん!?」

セイントヒップの身代わりとなった佐々木はパンケーキに包まれる!


「セイントヒップ……。う、上だ……スヤァ……」

佐々木はもはやフカフカパンケーキクッションに包まれて意識が朦朧としてる。

「佐々木くん!佐々木くん!」

「スヤァ……」


「セイントヒップ!上を見るプリ!」

プリケッツの言葉に上を見るセイントヒップ。そこには巨大なパンケーキモンスター!

「お、おおきい……」


あまりの大きさに怯みそうになるセイントヒップ。だが、諦めなかった。なぜなら、割り箸が見えていたからだ!

「割り箸は真下にあるプリ!」

「うん!折ろう!」

割り箸をケツで折ればパンケーキモンスターはやっつけられる。そうすれば、みんなも目覚めるはずだ!


「パパパパ!」

パンケーキモンスターがジグザグに飛びながら、小さなパンケーキを連続で打ち出す!

「えーい!たあ!」

セイントヒップは連続バク転で華麗に回避!そのまま大ジャンプで割り箸を掴みに行く!だが!


「くっ!届か……ない!」

あと僅かというところで空飛ぶパンケーキモンスターに届かない!真下という位置。これが厄介なのだ。真上に割り箸が刺さっていたとしたら、木や柱からの大ジャンプでよじ登れただろう。


だが、真下に割り箸があるとなれば、下から直接大ジャンプで掴みに行かなければならない。

「んんんんん……えーい!」

セイントヒップは力をためて、さらなる速度の大ジャンプ!

「パ!パパパ!」

巨大なパンケーキモンスターはその動きを見透かしたようにジグザグ移動で回避!


「パパーン!」

飛んでくるパンケーキ!

「こうなったら、一か八かだ!えーい!」

飛んでくるパンケーキを踏みしめて、多段ジャンプを試みる!だが!


「あ、あれ?」

パンケーキを踏んだ足が動かない。まるでふわふわの曇に包まれているような。

「あ?あ……?」

そのままパンケーキに倒れ込むセイントヒップ!

「あ~……ふっかふかだぁ~♪」


「しっかりするプリ!寝ちゃダメだプリ!」

「うーん、でも、ふわふわでふっかふかで、もう……」

セイントヒップはパンケーキクッションみ身を任せて、もはや夢心地だ。その目はぼんやりとして、顔はとろけて眠る寸前だ。

「もう、だ、だめぇ……。スヤァ……」


「セイントヒップ!しっかりするプリ!!」

「むにゃ~。ふっかふかぁ……」

もはやプリケッツの声も届かない。


「うわーん!セイントヒップが負けちゃったプリ!どうしようプリーッ!」

泣き叫ぶプリケッツ。もはやここまでか。だが、立ち上がる男がいた!

「セイントヒップが……負けただって……?」


パンケーキクッションの心地よい眠りすら跳ね除けて目覚めたのは佐々木!

「寝てる……場合じゃ、ねえ!」

セイントヒップの元に駆けつける!

「セイントヒップ!起きてくれ!」

「スヤァ……」


佐々木の必死の呼びかけでも、セイントヒップは目覚めない。

「くそ!俺には何もできないのか!?」

佐々木が諦めかけたその時だ。


(……キミは、セイントヒップを助けたいプリ?)

「その声は……!」

心に直接話しかけてくる謎の声。佐々木は、いつの間にか割り箸を手に持っていた。


(オイラはプリケッツ。セイントヒップに魔法の力を分けてあげたのはオイラだプリ。キミが望むなら、セイントヒップを助ける力を、キミにもわけてあげられるプリ)

「ほ、本当か!?」


(でも、一度オイラの力をうけたら、これからもずっとセイントヒップに協力してもらうことになるプリ。もう二度と、いつもの生活には戻れなくなるかもしれないプリ。それでもいいプリ?)

「構うもんか!」

佐々木は迷わなかった。


「あの子を助けられるのは俺だけなんだろ?」

周りを見渡すと、目覚めているのは佐々木だけだった。

「だったら、やるしかねえじゃねえか!」

(わかったプリ。それじゃあ、その割り箸を割るプリ!)


「ああ!俺が、セイントヒップを助けるんだ!」

佐々木は、割り箸を割った!


パキン。


その時だ!

『パパラパ~チャララパパラパ~♪パッパラ~パパラパッパッパラ~♪』

謎のBGMが鳴り響く!

「こ、これは!?」


佐々木の体が宙に浮き、光に包まれる。これは……変身バンクだ!


全身が光のシルエットになり、スニーカーががはじけ飛ぶ!そして代わりに装着されるのはカウボーイブーツ!

次はズボンとTシャツがはじけ飛び、ショートパンツ、胸下で縛られたへそ出しTシャツ、そして茶色いカウガールジャケットが装着される!


腰には二丁のガンベルト。手にはレザーのグローブ。首元にはスカーフ。頭にはテンガロンハット。


そして最後に、蛍光イエローのバイザーサングラスが装着される!

『パパラパ~パパパッ♪パッパン♪』

BGM終了!

変身完了!サイバーカウガール魔法少女服に身を包んだ、セイントリングの誕生だ!

「お!え!?ええ~~~!?」


「今日からキミは、魔法少女セイントリングだプリ!」

「はぁ!?魔法少女!?セイントリング!?」

あたふたと戸惑うセイントリングに、パンケーキが襲いかかる!


「う、うわ!どうすりゃいいんだ!」

「腰の武器を使うプリ!」

セイントリングは腰のガンベルトから二丁の銃を取り出す。だが、ただの銃ではない。


「輪ゴム鉄砲!?」

それは紛れもなく、割り箸で作られた輪ゴム鉄砲だ!

「こんなもんでどうしろってんだよ!?」

迫りくるパンケーキ!


「いいから撃つプリ!」

「ええい!やってやるー!」

セイントリングが輪ゴム鉄砲でパンケーキを攻撃!

「パパーン!?」

命中!

「パーン……」

パンケーキに当たった輪ゴムは光のリングとなり、パンケーキの頭上に輝く。そして、パンケーキは光の粒になって消えていった。


「セイントリングは聖なる輪っかだプリ。キミの撃つ輪ゴムには魔力が流れているプリ。だから、悪霊に効果があるプリ!」

天使の金の輪をご存知だろうか。セイントリングが放つ魔力を帯びた輪ゴムは、まさにそのパワーを持っているのだ!


「よし!これなら……」

セイントリングはセイントヒップが眠るフカフカパンケーキを撃ち抜く。パンケーキクッションは光となって消え、セイントヒップが目を覚ました!

「むにゃ~……ってあれ?」


「セイントヒップ!目が覚めたか!?」

「えーっと、キミは……?」

まだ頭がぼんやりしているセイントヒップ。

「俺はセイントリング。えーっと……」

「新しい仲間だプリ!」


「新しい、仲間?」

「あ、ああ、そうさ!よろしくな!」

二人が挨拶を交わそうとしたその時だ!


「パパパパッ!パパーッ!」

巨大なパンケーキモンスターから大量のパンケーキが放たれ、二人に襲いかかる!

「させるか!」

セイントリングが連続輪ゴム射撃!パンケーキを撃ち抜く輪ゴムは百発百中だ!

「「「「「「パパーンッ!」」」」」」

だが、あまりにも数が多すぎて撃ち落とせない!弾幕の隙間からパンケーキがセイントリングに飛び込んでくる!

「えい!」

すんでのところでセイントヒップが割り箸型魔法少女ステッキでパンケーキを撃ち落とす!


「俺が時間をかせぐ!その間に何か作戦を!」

「うん、わかった!」

ヒップとリングは背中合わせ構え、パンケーキを次々と迎撃していく!二人の魔法少女装少年は今、一膳の箸となったのだ!


「パパーン!」

「たあ!」

「パパーン!」

「くらえ!」

迫りくるパンケーキを次々と撃ち落とす二人だが、リングがあることに気がついた。

「……なんかこのズボン、短くなってないか?」


リングのズボンは、変身直後は膝上くらいのショートパンツだった。だが今では、太ももの中頃までの長さになっている。よく見ると、半袖だったTシャツも、今ではノースリーブだ。


「輪ゴムは魔法少女服の魔力を変換しているから、まあそうなるプリ」

プリケッツがサラリと答える。

「まあそうなるって!?」

「早くしないと、魔力が切れてケツ丸出しだプリ」


「そういうことは早く言ってくれよ!」

そうこう言っている間にもパンケーキは襲いかかる!

「うわ!」

反射的に輪ゴム射撃!じわじわ短くなるズボン!


「リング!あの割り箸を撃ち落とせない?」

ヒップがパンケーキをステッキで打ち返しながら作戦を提案!

「いや、やってみたけど避けられた。なにか、他の弱点があれは……」


「弱点……そうだプリ!リング!ゴーグルだプリ!」

「ゴーグル?」

「そのリングは相手の弱点が見えるプリ!モンスターをよく観察するプリ!」


リングは蛍光イエローのバイザーゴーグル越しに、巨大なパンケーキモンスターを凝視する。

「……これは!」

ゴーグルにはWEAKの文字が二箇所。一つは邪悪な割り箸、そしてもう一つは、一見するとなにもないパンケーキ部分だ!


「そこだ!」

限界まで引き絞られた輪ゴムを発射!一条の光となった輪ゴムは、弱点を直撃!

「パパーッ!?」

命中箇所が破れ、中からメイプルシロップが流れ出す!バランスを失った巨大なパンケーキモンスターはフラフラと墜落!


「今だ!行け!」

「うん!」

全力で走り出すヒップ!

「「「「「パーン!」」」」」

最後の悪あがきか、パンケーキがヒップに襲いかかる!だが!


「「「「「パンッ!?」」」」」

光の粒となって消えていくパンケーキ!撃ち抜いたのはもちろんリング!そのパンツはもはやホットパンツだ!


ヒップは振り返らず走り、そのまま大きくジャンプ!墜落する巨大なパンケーキモンスターから割り箸を抜き取り、ケツ割り箸準備完了!……そして!


「えいっ!」


バキィ!


割り箸が割れた!

「パ…パパパ……」

パンケーキモンスターが中から光りだす!そして!

「パーーーーーーーーンッ!!!!!!」

パンケーキモンスターは爆発!キラキラした光の粒子となって空へと登っていった。


人をダメにするパンケーキクッションも消えていく。みんなもすぐに目を覚ますだろう。

「やったプリ!二人の協力の力だプリ!」

喜ぶプリケッツ。


「さあ、みんなが目を覚ます前に、隠れなきゃ」

セイントヒップが手を差し出す。

「あ、ああ……」

だが、リングはその手をとることを戸惑う。

「どうしたの?」


「あの、俺、その……」

「早くしないと変身が解けるプリよ?」

もう目覚め始めている人もいる。このままでは正体がバレてしまう。


「……しょうがないなあ」

セイントヒップはちょっと笑ってそう言うと、リングをお姫様抱っこした。

「って、え?」

「しっかり掴まっててね」

リングを抱えてセイントヒップは大きくジャンプ!人気のない森の奥に姿を隠した。


――――――――――


「今日も助けてくれてありがとう」

「いや、俺も必死だったし、ハハハ……」

ヒップとリングが笑い合う。


「あ、あの!お、俺、キミのことが……」

リングが何かを言おうとした時、二人の体が光りに包まれ、変身が解除された。


「……え?」

セイントリングだった佐々木は、セイントヒップだった割下を見て、一瞬動きが止まった。


「キミのことが、なんだって?佐々木くん?」

「……う、うわー!」

驚いて何歩か後ずさりする佐々木。


「オ、オマエ!セイントヒップ!オマエ!?ええ!?」

「あー……、うん。そうなんだ。ずっと黙ってたけど、僕がセイントヒップだったんだ」

「な、なんで俺に言ってくれなかったんだよ!」


「だって、恥ずかしかったし……」

もじもじする割下。

「んなもん俺なんてオマエ!お、オマエに向かって、その、か、可愛いとか言っちまってうわー!俺のほうが恥ずかしいよ!」


「そんな恥ずかしがることないプリ。リングもヒップに負けないくらい可愛かったプリ!」

ニッコリと笑うプリケッツ。

「どっちが可愛いとか、そういう問題じゃなくて……」

「うーん。でも、僕も可愛いと思ったよ」


「オマエに言われると、な、なんつーか、その……」

もじもじする佐々木。

「まあまあ!そのうち慣れるプリ」

佐々木を励ますように、にこやかな笑顔で肩を叩くプリケッツ。


「あ、そうだプリ!これを二人に渡すプリ!」

プリケッツはどこからともなく、2本の箸箱を取り出した。1つはピンクで、1つはイエローだ。

「これは二人が一組の魔法少女である証だプリ。片方が変身すると、もう片方の持ってる箸箱が音と光でお知らせしてくれるプリ。マナーモードもあるから安心プリ」


割下はピンクの箸箱を、佐々木イエローの箸箱を受け取る。

「ふーん?」

佐々木は箸箱をまじまじと見る。ダイヤモンドカットのクリスタルのような石が先端についている。振ると、カタカタと音がした。中に割り箸が入っているのだ。


割下も不思議そうに箸箱を眺める。佐々木のものと同じく、ダイヤモンドカットのクリスタルのような石が先端についている。振ると、カタカタと音がした。もちろん中に割り箸が入っているのだ。


「これで二人は一膳托生いちぜんたくしょうプリ」

プリケッツの言葉に、割下と佐々木はお互いを見合う。

「えーっと、これからもよろしくね」

「あ、ああ!よろしくな」

固い握手を交わし、二人はみんなの待つ広場へと戻っていった。


「あ、それから、声をちょっと変えたほうがいいよ。バレちゃうかもしれないし」

「そうだな。コホンッ……アー、アー。こんなもんかな?」

佐々木が声のトーンを変えてみる。

「いいと思うよ」


「よし、それじゃ今度から……。って、もしかしてオマエ、変身してるときから俺だってこと知ってたな!?」

「エヘヘ……」

「うわー!くっそ恥ずかしい!オマエあれだぞ!二人だけの秘密だからな!」

「うん。もちろん。二人だけの秘密だよ」



――――――――――


ついにコンビを結成したヒップ&リング!これからは二人で一膳!コンビでモンスターをやっつけろ!



ケツ割り箸魔法少女装少年セイントヒップ

第3話:新たな仲間!セイントリング!

おわり

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