第2話
見知らぬ部屋の中───
浩太郎と、確かにそう聞こえた。
その声は下から聞こえてきた。地下に住んでいる地底族が上に上がって来たのだろうか。
「浩太郎?起きてるんでしょ?学校遅れるよ?」
いや、確かに声はキノヤの事を読んでいる。
「それはそうと、ガッコウ……ってのはなんだ?」
聞き馴染みのない言葉に戸惑うキノヤ。しかし、
多少危険はあるが、一先ず下に降りて状況を確認するしかないか。──
この判断の早さが悪の頭であった由縁。キノヤはドアの方へ向かい、
ガチッ、ガチガチ──
ドアが開かないことに気づいた。
いくら強く押しても引いてもガタガタいうだけで一向に開く気配がないのだ。
「早くしないと起こしに行くよぉ?」
声は少しづつ近づいて来ているのが分かる。
(クソッ……これは罠だったのか?)
考えながらドアの左側を押したり引いたりしてみるがやはりガタガタいうだけだ。
「部屋に入るまで……5!」
声はすぐそこまで来ており、遂にカウントダウンを始めた。
何をする気だ?
分からないがとてつもなく嫌な予感がする。
「4!」
ガタガタガタガタ、開かない。
「3!」
ふと、キノヤがドアの右端をみると銀色の円形の取っ手があることに気づいた。
なんて愚かなことよ、こんなものに気づかなかったなんて、しかしこれで出られる!
「2!」
キノヤは全力で右側の取っ手を押した。
─────開かない。
「1!」
引いても開かない。このドアは本当にドアなのだろうか?そう思わせるほどに固く閉ざしたドアは開かない。
「0……!」
最早ここまでか…。
キノヤが諦めたその時、銀の取っ手が少し回転したかと思うとドアは今までキノヤが苦労したことが信じられない程にスムーズに開いた。
呆然とするキノヤに声────黒髪を後ろで束ねた女は言った。
「遅刻するよ?」
キノヤはドアノブを知らない。
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