第2話 家の下から観音像が現れる

祖母が呼んだ霊能力者こと拝み屋は、袈裟をまとった僧侶風の人物だった。

祖母宅の仏間に入って経を上げたり、霊視をした拝み屋は、

「この部屋の床下に、観音様が埋まっている。白蛇さんはそれを知らせるために現れはった。急いで観音さまを掘り起こしてあげなさい」

と祖母に告げた。掘り起こす時は、拝み屋も立ち会うという。

果たして、祖母宅の仏間の畳を上げ、床板をはずし、家の下の土を掘り返すという大掛かりな作業が始まった。当日は、祖母の最年長の孫、私の従兄も立ち会うことになった。

そうして土を掘っている最中、突然、辺りで強烈な光が瞬き、その直後、土の中から小さな観音像が出てきたと言う。

「わぁ、おばあちゃん、ほんまやった。ほんまに観音さまが埋まっとった!ほんまよかったなぁ!」

祖母と従兄は、抱き合って喜んだという。

後日、従兄本人から、この驚くべき出来事について直接話を聞く機会があった。

当日の祖母への言葉や態度とは裏腹に、従兄は、

「あんなんはニセモノや。拝み屋もペテン師や」

ときっぱり言い切った。

当時、祖母の驚きと喜びようは大変なものだったので、調子のいい従兄は、それに合わせて、一緒に喜んだふりをしただけという。

「土の中に長い間埋まってたいうのに、観音さんには土1つ付いてなかった。カメラのフラッシュみたいなものを突然たいて、わしらの目がくらんでいる隙に、あの拝み屋が袈裟の袖にかくしてた観音さんを出して、土から出てきたように見せかけただけや」

身内で当日立ち会ったのは従兄だけだったが、従兄はまったく信じていなかった。

しかし、祖母はこれも日頃の信心のおかげと狂喜し、観音像を恭しく祀る祭壇を仏壇の横に作り上げた。

そして、さらに家運が上がるように、つまりはもっともっとお金が手に入るようにと、祖母は毎日、観音像を拝み倒すようになった。


家の下から観音さまが出てきたという話は祖母の近所で有名な話になり、度々「参拝」に訪れる熱心な信者まで現れた。

うわさはさらに広まり、ついにはテレビ局まで押しかけてくる事態となったのだった。




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