あなたも使える究極詠唱黒魔術(アルティメット・クロマジュツ)

ちびまるフォイ

あなたもどこかに持っているはず・・・

中学卒業してから疎遠になっていた友達から

急にメッセージが飛んできたので見てみた。



>いま異世界にいる



「あぁ、たぶん中学卒業とともに頭おかしくなったんだな」


リスキーな高校デビューに失敗したのかその原因はさだかではないが

アニメと現実をごちゃ混ぜにするくらいなので相当だろう。


『本当だって! 無視すんなよ! 中学からの親友だろ!!』


「ええーー。今それ持ち出すーー?」


キレた友達から通話がかかって来た。

電話越しに聞こえるドラゴンぽい叫び声も聞こえてくる。

写メも送って来たので信憑性は高そうだ。


「それで、どうする気なの? 現実世界に戻りたいの?」


『いや、こっちは学校もないしみんなおっぱい大きいし

 一生異世界で生活することには決めたんだが』


「高校生にしてその後の人生きめたんだ」


『どうやら、そっちで書き込んだ呪文があると魔法が使えるんだ。

 なぁ頼むよ。俺の異世界ライフのために、呪文を書いてくれ』


「わかった。協力するよ」


時間もあったので旧友の頼みを受け入れることに。

図書館に向かい、図書員から変な目で見られながらも黒魔術所を見つける。


「こんなんで効果あるのかな」


黒魔術の詠唱呪文を書き込んでいく。

反応は友達が返信するムービーでわかった。



『ありがとう!! 魔法が出た! これで俺も勇者だ!!』


「本当に出るとは思わなかった。現実じゃ効果なくても異世界だと効果あるんだな」


『助かったぜ。これでモンスターも一網打尽だ』


「レベルアップして魔法とか覚えないの?」


『何言ってんだ。ここはゲームの世界じゃないんだぜ。

 いくらモンスターを倒しても増えるのは死がいだけだ』


「……そこは変にリアルなんだね」



それでも、俺のチョイスした魔法は異世界では強力らしく

本に書かれている呪文をメッセージとして投稿すると向こうで発現する。


友達は俺とふたり一緒にモンスターを倒していた。


でも、ある日それも限界が来てしまった。



『ダメだ! もう今の魔法じゃ太刀打ちできない!!』


「どういうこと? 魔法が効かないの?」


『あぁ、最近は魔法耐性も上がっているのかいくら打っても倒れない。

 もっと強力な魔法はないのか?』


「そういわれても……」


図書館にある黒魔術所をかたっぱしから開いて、

そこに書いてある呪文を必死にメッセージで投稿する。


投稿されたメッセージはモンスターの前に映し出され、

そこから魔法が発現し敵を倒す。


……が、どの魔術書も強くなかった。


『もっといい魔法ないのか!? もっとこう敵を一発でやっつけられるようなやつ!』


「そんな都合のいい魔法ないよ」


『困るんだよ!! じゃなきゃみんなにちやほやされないだろ!!

 なんでもいいから強い魔法をバンバン入力しろよ!』


友人もいらいらしてきたのがわかる。


毎回こちらで呪文をたくさん文字入力すれば手数で圧倒することはできるが、

授業中にも必死にケータイいじって没収されでもしたら元も子もない。


「いったいどうすればモンスターをたくさん倒せて、

 なおかつ詠唱が1回で終わる魔法を見つけられるんだ……」


もう図書館もネットも調べ尽くした。

黒魔術なんてどこにも……。


「いやある!! あれがあった!!!」


俺は押入れにしまっていた中学時代の私物をあさってそれを見つけた。

そうこうしているうちに、友人からメッセージが飛んできた。



>やばい! モンスターが出てきた! 超強い呪文たのむ!!



「まかせとけ!!」



"暗黒の混沌より解き放たれし虚ろなる黒炎よ

邪悪なりし万象を討ち滅ぼし因果を逆巻け


禁術魔法「レウチ・ニシビョク・キロュウ」"





『それ俺の中二の時にノートに書いたやつじゃねぇかぁぁぁぁ!!!!』


友人は絶叫とともに、呪文を見た敵をことごとく呪文(物理)でやっつけた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

あなたも使える究極詠唱黒魔術(アルティメット・クロマジュツ) ちびまるフォイ @firestorage

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ