第15話 『偉大な竜との誓い』
腕が痛むのか竜は叫び、大口開けながら体液をまき散らす。
奴の巨体が一歩二歩と後ずさっていく間に、僕はセリに礼を言った。
「セリ、ありがとう。君のおかげだ」
――いいえ、お礼など。ですが、スマホにはこんなことできないでしょう?
彼女の声がとても誇らしげで、僕はつい笑ってしまう。
そして、僕達は再び竜へと向き直り、剣を突き付けた。
「まだ、やりますか?」
僕が問いかけると、竜は低く唸る。
竜とは言え、言葉を交わせる相手を殺すのが僕はまだ怖い。
殺さずに済めばいいのにと考えながら、僕は声が震えないように竜へ言葉を紡いだ。
「貴方は、勇者なら堕女神に挑むのを許すと言ってた。なら、その深い片腕の傷で、僕を勇者と認めてほしい」
『……何、だと?』
静かに怒る、だが痛みを堪える声。
奴も、敗北を全く認めていない訳ではないと思い、僕は畳みかけた。
「僕には挑む権利がある筈だ。そして、貴方に誓う。必ずラザニナを女神に戻してみせると」
『我に、誓うだと?』
僕は頷く。
「貴方はラザニナが唯一傍に残した人だ。彼女が元に戻った時、貴方がいな
――…………マスター、良いお言葉だと思いますが『いな糸』ではなく『いないと』です。
顔をうつむけ僕が赤面していると、突然竜の体が輝き、奴……いや、彼は人間の姿になった。
「力は示された。我は貴方を勇者と認め、我が主の元へ案内しよう」
思わず、顔がほころんでしまう。
そんな僕を嗜めるように、竜は告げた。
「我に誓った言葉、決して違えるなよ?」
◇
――マスター、今よりクールタイムです。30分は戦闘を避け、誤字に気をつけてください。
人の姿となった竜の後をついて歩くこと数分、セリがクールタイムに突入した。
わかったと僕はセリに答え、ラザニナの所へ行くまで時間をかけねばなと考える。
しかし。
「着きました」
「へ?」
――え?
敵意のない無慈悲な声が、僕達に告げられた。
「この先が我が主、ラザニナ様がおわします『竜王の間』です」
竜と戦った場所から、ラスボスの前までは……ものすごく
――本当に、近すぎです……どうしましょう、マスター。
うん。どうしよっか……。
セリが誤字を指摘する余裕もない程に、僕達はピンチだった。
しかし、竜は「この先が」と言ったが、辺りには扉も何もない。
まだ大丈夫。
僕は、そう思って胸を撫でおろす。
だが、奴がパンと手を打つと、僕達の足元に赤色で描かれた模様が現れた。
「転移陣です」
泣きそうになった。
「では、参りましょう」
「えっ! ちょ、待っ」
僕の制止もむなしく、竜は転移陣を起動させた。
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