第13話 ダンジョン『竜の巣窟』

 必要になるからとライゾウさんにわされた松明に餌をやり

 ――「買わされた」です、マスター。松明には火をやってください。

 買わされた松明に火をつけ、僕達はダンジョンを奥へと進んでいった。


 ダンジョンは奥に進むにつれ広く、そして天井が高くなっていく。

 やがてぽっかりと広い空間に出たのだが、不思議なことにその間、全く敵と遭遇しなかった。


 僕は一応、アレ

 ――ドラゴンキラーソードですね。

 そう、それを構えながら臨戦態勢の、割烹着を身にまとって歩き続ける。


 だけど。


「何も、出てこないね」


 敵どころか虫の一匹だって出てこない。

 ここは魔王……堕女神の住処なのに。


「これって罠だったりするのかな?」


 あまりの静けさに不安が生まれ、僕はそっとセリに訊ねた。

 すると、彼女は冷静に答える。


 ――いいえ、マスター。これは罠ではありません。この静けさには理由があります。ここは竜の巣窟。堕女神ラザニナ様が住まう偉大な竜グレートドラゴンが守護するダンジョンですから。


偉大な竜グレートドラゴンは物静かで大人しいってこと?」

 ――いいえ。偉大な竜グレートドラゴンは数が少ないのです。それに情報によると、ラザニナ様は堕転した際、偉大な竜グレートドラゴンを厳しく選別し、5尾しかダンジョンに連れ合うことを許さなかったそうです。


「つまり、敵が5尾? しかいないから静かだって言うのか?」

 ――いいえ、敵はもっと少ないです。ラザニナ様は前日に数名の配下を排斥はいせきしたらしいので。


 その情報には僕も心当たりがあった。


「つまり、敵は……竜があと1尾か2尾だけってこと?」

 ――ええ、だからと言って油断はできませんが。


 と、警告するセリに僕が返答しようとしたその時。


『一尾だ』


 巨大な振動、地響きのような声が天井から聞こえてきた。

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