第6話 魔法装置『聖ブポイント像』

 宿を逃げて僕達は

 ――『商店』です、マスター。


 商店の広がる通りを歩いていた。


「勇者価格のある店だらけだな」

 ――女神の神殿付近にある街の店は、みな勇者価格を設定しているようです。


 思わず気が遠くなる。


「これじゃ今夜は野宿かな。はぁ、家のベッドが恋しいよ」


 と、つい僕が溜池ためいけを吐くと


 ――『溜息』です、マスター。一度、ご実家に戻られますか?


 セリが、信じられない提案をした。


「えっ? 戻れるの?」

 ――はい。ここから一番近いから元の世界に転移できるかと。

「セーブポイント?」

 ――いいえ、マスター。『』です。大魔導士ブポイント様が作った異なる世界を行き来するための魔法装置が置かれています。


 セーブポイント……。

 ――ですから『聖ブポイント』です、マス

 いや、のは誤字ではなくて

 ――『今』ではありませんか? マスター。


 ……ひとまず、そこまで案内してくれる?

 ――了解です、マスター。


 僕達はその、聖ブポイント像へ向かった。



 セリの案内で到着した広場。

 そこには聖ブポイントらしき星間精悍な男性の像が立っていた。

 直後。銅像をはさむように岩石が二つ落ちてきた。

 実質的な隕石である。

 幸い死傷者はいなかった。


「あの、セリさん?」

 ――クールタイムです、マスター。


 この時、僕はセリと誤字修正のタイミングについて話さねばと感じた。


「セリ。これからは戦闘時と今みたいに大事になりそうな時以外、誤字は虫し無視ていいから」


 僕は混乱する広場の人々を眺め、傍に飛んできた虫を追い払って言う。


 ――了解です、マスター。今後は誤字の危険度を判断しつつ修正します。


「ありがと。しかし、あの隕石はどっから降って来たんだ?」

 ――衝撃波がない事から察するに、実際に宙から降って来た訳ではないようです。


 と、損な話をしながら僕達は聖ブポイント像の前まで来た。

 ――損な話だなんて失礼です、マスター。


 誤字でごめん。

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