第5話 『勇者価格』
街に到着する頃には日が暮れており、僕はまず宿を探したのだが。
宿に
思わず吐くくらい吃驚した。
――落ち着いてください。マスターが吐いたのは誤字のせいです。
僕は誤字のデメリットを再確認しつつ、もう一度一晩の宿代を確認する。
宿泊料金。
男性、銅貨十枚。
女性、銅貨八枚。
最初、僕は銅貨十枚を払えばいいのだと思った。
この世界の通貨にはまだ疎いが、まあ、これくらいだろうと思った。
だが、それらの隣の項目で問題が発覚した。
異世界からの勇者様、金貨50枚。
これはナンだ?
明らかなぼったくりだろう。
僕は馴染みのないパンを手にしたまま、宿屋の店主に訊ねた。
「あの、この『異世界からの勇者様金貨50枚』ってガチですか?」
はげ
「おう、ガチだよ。この近くにはエシュルダって女神の神殿があって度々異世界から勇者が召喚されるんだがよ。皆たんまり金を持たされてんだ。だからこの値段設定。勇者価格って訳だ。ところで兄さん? それを訊くってことは……あんたまさか」
は
「何だあっ? 黄泉の国から
店主が感動し混乱する中、僕は踵を返して全力で走る!
い、居間の家に逃げよう! これじゃいくら鐘を取られるか知れない!
――クールタイム終了です! しかし、今はそれどころではありませんね! 早く居間でなく外へ逃げましょう! 手に持つ鐘も捨ててください!
僕達は逃げるように宿を出た。
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