第7話 帰宅
聖ブポイント像の足元には複数の石碑があり、奥にシャボン液みたいな膜状の入口があった。
「このシャボン液の膜をくぐればいいの?」
――シャボンではなく魔力の膜です。そこをくぐれば元の世界に戻れます。
「本当に? こんなので?」
行きは女神様に召喚されて来たのに、帰宅はシャボン液だなんて不安になる。
――小胆なのですね。ちゃんと戻れますよ。
「……じゃ、それは信じるけどさ。元の世界に帰った後、またここへ戻る時はどうするんだ?」
――ご安心を。元の世界へ帰った際、出入り口となる簡易的な入口が自動で作られます。
便利だな。
と、この時の僕は思っていたのだが。
◇
元の世界に帰って、考えは変わった。
「自動で作るってさ、自分で設定できないってことなんだな」
――そうですね、マスター。
元の世界に戻って来た時、僕は部屋のベッドに落ちた。
そう、落ちた。
「よりによって部屋の天井に作られるとはね」
僕は天井に現れた縦長のシャボン膜を眺めて愚痴をこぼす。
――ここを通るのは少し苦労しそうですね。
脚立でも使うかな。
なんてことを考えつつ、ひとまず僕は現状の把握にも努めた。
枕元に置いていた筈のスマホを探し、見つけて日時を確認する。
日付に変化はなく、時刻は平日の夕刻を指していた。
どうやら異世界に行っている間に、半日ほど経過したらしい。
当然、高校もサボったことになる。
「おっ、皆からメッセ来てる」
僕は部活仲間から届いた心配メッセージに返信しつつ、学校を休んだ言い訳を親にどう説明したものか考える。
――……。
しかし。
「セリ?」
急に黙り込んだセリが気になり、声をかけてしまった。
――なんでしょうか?
「いや。急に黙り込むから、どうかしたのかなって」
すると、セリはどこか恥ずかしがるように返答する。
――いえ……先程からマスターが誤字をしてくださいませんので、やることがないなと。
「あー……」
そういや僕の誤字は異世界にいる間のデメリットだったな。
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