第8話

私は赤ん坊の頃、寝ていた掛布団の材質と柄、色を記憶しています。

写真はあっても当時の物は白黒なのですが、女児なのにやや紫がか

ったブルーの、薔薇の花を散らしたサテンでした。寝ていてどうも

手は、頭の天辺には何故か届かないんだな…と不思議でしょうが無

かった記憶があります。

3歳になった朝、母に「今日から3歳になりました。これからは、

お父さん、お母さんと呼んでもいいですか?」と尋ねたそうです。

それまでは、お父ちゃんお母ちゃんと言っていたようです。

両親は、ドギマギしながら「ああ…はい。まあ、じゃあそうして下

さい」としか答える事が出来なかったそうです。

その後も、熱を出した自分を母が負ぶって、大慌てで医者に連れて

行こうとしてると、背中で「何にも心配しなくていいのよ、大丈夫

だからね…」と囁くので、気味が悪くて放り出そうかと思ったと述懐

しています。

中学生の頃、部屋で試験勉強をしている内に転寝してしまい、二階から

母が下りて来て「寝てるんならもうやめて起きなさい」と注意しました。

ミシミシと梯子段の急な階段です。私は「でも、起きれないよ~」等と

文句を垂れて、もうしょうがないね…という風に自分の伸ばした片手を

引っ張ってもらってグイッと起こしてもらいましたが、起き上がると誰

もいませんでした。確かに手を引っ張られた感触は残っているのに…。

腹筋運動みたいにして一人で起き上がったんでしょうか?未だによく分

かりません。当時は、二階の寝室のベッドの上で頻繁に幽体離脱し掛け

布団から、斜め30度位の角度でずるずると上半身が出て行く感覚に襲わ

れました。冬は掛布団から出て寒いとか、腰の辺りのジョイントが外れ

ると、身体に戻れないって言うけど…等と結構焦りました。完全に出た

訳でもなく、途中で収まるので良かったんですが…。

今思えば、所謂中二病だったんだろうと思っています。

当時は、超常現象等が実際に存在するとは考えませんでしたし。

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