5ー16

 エリザベスとモルガナはルニアの前で顔を見合わせている。

 ルニアが見破ったのが信じられない様子のモルガナ。

 エリザベスはどこか当然ですといった風体である。

「小娘よ、どこで気付いたというのだ?」

「ひとつは、呼称です。ご主人様は、ブラド様と呼ばれるのを嫌います。近しい間柄のエリザベスやモルガナさんなら仕方なくとも、私には呼ばれたくない筈」

「もうひとつは、私の身体の心配です。ある意味ご主人様は私が怪我をして腕の一本を無くしたとしても取り乱したりしない。怒ったりはしてくれるかもしれません。でも、慌てふためくことはない。ご主人様にとって痛みこそ繋がりであり……」

 ひとつ咳払いをする。改めて、言葉を続けた。

「痛みこそ、繋がりであり愛なんだと思います。だからこそ私にこれをくださったのです」

 腕をあげて、証である指に嵌められた指輪をモルガナに示した。

 モルガナは合点がいったという顔をしてエリザベスを見る。

「この勝負は引き分けということじゃな」

 エリザベスはクスリと笑う。

「あらあら、モルガナも耄碌もうろくしてしまわれたのかしら。勝負は引き分け? これはただの時間稼ぎでしかないのですよ。ルニアも仰ったように茶番でしかないのです」

 そういうと、エリザベスは指を鳴らすとたちまちその姿は霧散してしまった。

 いつのまにかアルマの姿も跡形もなく消え失せていた。

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