5ー6

「ふむ、大体のことは理解した。だが、それを叶えてやるとして何の見返りがある?」

 モルガナはカラス姿で羽をばたつかせながら、黒いつぶらな瞳を輝かせながら弟子である男に問うた。

 男が腕を組み、モルガナの問いに思案していると、

「良い答えが見つからぬならば、お主の弟子を貸してもらおうか。なあに何日もとは言わん。2、3日で構わん。どうじゃ?」

 男は即答はできず、隣にいるルニアを見る。ルニアは男の視線を受け止め、力強くうなずいてみせた。

「ルニアも了承しました。よろしくお願いいたします」

 男は師に対する最大の礼を示し、それに倣ってルニアもこうべを垂れた。

 モルガナは満足そうに目を細めたかと思うと、勢いよく飛び立った。

 男とルニアの精神に「相分かった」とモルガナの声が響いた。


 ❇︎


「お師匠さま、行ってしまいましたね」

「ああ……」

 ルニアは天を仰ぎ見ながら投げかけた言葉に、男は力なく返す。

 男も空を数秒見つめたあと踵を返し歩き始める。遅れまいと、ルニアもそのあとに続いた。

 偉大な魔法使いである師、モルガナに一計を託した。

 仮にの邪魔があろうとも何とかなるだろう。

 だが確信を持って断言できない不安が、男の心に一点。水面に揺れる波紋のように広がって行った。

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