5ー3

「あんたが、それを叶えてくれるっていうのか?」

 ジルは、男に疑心をにじませながらも、期待に声が震えていた。

「私には、魔術に心得こころえがある者を知っている。だが同じ天の国に入れるかは保証できない。あくまで再会ができるということだ」

 ジルは私の言葉に合点がいったのか「やっぱりそうだろうな」と、苦笑まじりに呟いた。

「まあいい、死して再会できるなら構わない。頼む」

 ジルは独房の中で深々と頭を下げた。


 ✳︎


「ご主人様、あんな約束をされてよろしかったのですか?」

「ルニアは私の言葉が信じられないか?」

 ルニアは滅相もないといった風にかぶりを振って否定した。

「まあ信じろというのもいささか乱暴かもしれないな。私はあまりの才能はなくてね。よく師にも叱られたものだよ」

 ルニアが暫く私の言葉に言葉を失っている。

「ああ、ルニアに話すのは初めてかもしれないな。私には魔術のいろはを教えてくれた師匠がいる。名前はモルガナ。気難しい方だが頼りになる存在だ」

「気難しいとは失礼な弟子だな」

 しわがれた声で話しかけてきた一羽のカラス。

 ルニアはその衝撃に口を魚のように開閉させていた。

「噂をすればですね。師、お久しぶりです」

 男はうやうやしくカラスの姿で現れた師ーーモルガナにかしずいたのだった。

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