5ー2

 ルニアは独房の中で驚きを隠せない男を見た。

 顔は髭に覆い尽くされ、眼だけが鋭く光を放っている。

 男はかつて、祖国を救う英雄として活躍していた。同胞と共に、劣勢を巻き返したのだ。

 男の剣の腕も大いに貢献した。

 だが、目の前の男だけでなく、全ての騎士の心を奮い立たせ、神に導かれるまま先導した者がいた。

 初めは、田舎娘でしかなかったが、天啓により戦場に現れ、聖少女だと祭り上げられた。

 だがその快進撃も長くは続かず、敵の手に落ちた後、魔女として処刑される事に……。

 激動の人生を歩んだ者の名は、ジャンヌ。オルレアンの乙女ラ・ピュセルだ。

 それが原因だったのかはわからないが、目の前の男はそのあと、少年を監禁しては虐殺を繰り返した。その数は、百五十人ともいわれているが、真相は定かではない。

 「ジル、あなたは三日後に執行される処刑台で天に召され、ジャンヌとの再会を望んでいる」

 ご主人様は、温和な口調で目の前の男ーージル・ド・レに語りかけた。


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