4-6

 少女は河岸に人だかる群衆を遠巻きに見つめていた。

 年端もない少女の遺体が見つかったと通報があったからだ。

 顔は判別できないほどに焼け爛れている。

 背中には少女の胸に刺さるナイフで付けられたのだろう。

「ニゲラレナイ」

 とだけ、刻み付けられていた。

 惨い事件だったが、狂気めいた事件もひとつの娯楽。

 と、言わんばかりに群衆は湧いていた。


 その中で、少女と怯える男。

 我関せずの、クリスに婉然と微笑むエリザ。

 少女は傍らに立つ男の顔を盗み見た。

 今まで見たことのない恐怖に支配された男の顔。

 焦点は合わず、物音がすれば震えながら確認する。

 この前の紳士が襲いに来るものだと心底、怯えていた。



 ✳︎



 だが、紳士は奇襲をかけることもなく、

 堂々と正面から、男のーー親方の潜伏する隠れ家に現れた。

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