4-2

 激しい怒号と打擲が、辺りを震撼した。


「×××! お前、何度言ったらわかるんだ。どんな奴でもいい。客を一人でも捕まえてこい」


 ぐびぐびと、酒瓶を煽りながら何度もうずくまる少女を足蹴あしげにした。

 少女は、頭を抱えお腹を蹴られないように、亀のようにじっと耐えた。

 嵐が過ぎ去るのをひたすら待った。


 酔いが回ったのか、興が削がれたのか。男は悪態をつきながら、部屋の奥へと消えていき、暫くして豪快な寝息が聞こえてくる。


 それを聞いてからようやく少女は、防御の構えを解き、立ち上がった。

 腕には多数のあざを作りながらも、ダメージは最小に抑えた。

 今まで、何度となく受けた折檻による対処法だった。

 だが安堵したのもつかの間、今度はお腹の虫が催促を始める。

 部屋の中を見回し、戸棚の奥に手を突っ込んでも何も食べるものはなかった。

 テーブルの上に置かれているのも空の酒瓶が転がっているだけ。


 少女は空腹を紛らわすために、部屋の外に出て井戸から水を汲む。

 水を腹に溜めても空腹が収まることはない。

 未だ、腹の虫は鳴っているが、少女は無視して隣の馬小屋で眠る。

 寝ている時だけが、唯一の幸せを噛み締められる時だった。

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