3-12

「ルニア……そんなことって」

 銀髪のルニアは驚愕の表情で、隣にいる男を凝視した。

 男は銀髪のルニアを見ようとはせず、目の前の『妹』と名乗ったを注視していた。


「おや、兄君。ひどい汗だね。ルニアがこうして迎えにきたのに。当主がずっと出奔したままでは周囲に示しがつかないからね」


 当主、とは何を言っているのだろう。

 事態と考えが追いつかず混乱する銀髪のルニアの手がぎゅっと握り締められた。


「ご主人様……」


 握られた手はなぜか震えていた。

 だが見上げた男の横顔は、自信に満ちた不敵な微笑みを浮かべている。


『何を弱気になっているんだ。目の前の女が戯れざれごとをいおうと、私はご主人様のルニアだ。それ以上でもそれ以下でもない』

 心のうちでそう、自分を鼓舞した銀髪のルニアは男の手を握り返し、


「私はご主人様の、愛しのルニアです」


 そう告げて、男の目をまっすぐに見つめた。

 男もまた決意が灯った目を銀髪のルニアに向ける。

 二人の仲にわだかまりも疑心さえなかった。

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