3-8 招待状

 『コンコン』


 昼下がりの部屋に扉を叩く音が響く。

 ちょうどルニアには買い出しを頼んでおいたが、ルニアの足音ではない。

 ならば宿の主人か。

 それにしては体重が軽い。廊下を歩く音に軋みは少なかったからだ。

 暫く沈黙を貫いていると再度、扉がノックされた。

 その後、扉の隙間に差し入れられた手紙。

 来客はそのまま退去する。


 物音が聞こえなくなるまで、その場に静止した後、ゆっくりと椅子から立ち上がる。

 手紙を取り、中身を確認した。


『親愛なる、❇︎❇︎❇︎様へ。今宵、祝賀会を開くにあたり、❇︎❇︎❇︎様一行をご招待致します。つきましては、日が地平に沈む頃、お迎えにあがります』


 差出人の名前はない。だが、男をよく知る人物であろう。

 この世界で男の名前を知るものは、数少ないからだ。


 暫くしてまたも、扉が叩かれる。

 男は躊躇なく扉を開くと、息を切らせて大荷物を抱えたルニアが立っていた。

 男はルニアの持つ荷物を受け取り、部屋へと招き入れる。

 男に何かあったのだろうかと。ルニアは男の顔を心配そうに覗き込んだ。


「大丈夫だ。来客があったのだ。それも懐かしい相手だ」


 会ってはいないが、アイツしかいない。

 男はこれから起こる再会に、胸躍らせてしまうのを止められなかった。

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