3-七

 私は、今日も日課のためにカフェへと足を運んだ。

 カフェのテラスで新聞を広げ、紅茶にはたくさんの砂糖を放り込む。

 飽和状態になり溶けきらない砂糖を強引にかき混ぜて、飲み干した。


 新聞の一面には大きく『凄惨な連続少女殺人事件』と銘打っている。

 全ての少女は銀髪で、見目麗しい美少女。

 そして凶器は、どうやってその場に固定したのか検討もつかないもの。

『ペンデュラム』と呼ばれる鋭利な振り子。

 元々は、処刑道具のひとつである。

 少女を抱える保護者には、外出を控えるお触れが発布されていた。


「主様、なんだか愉しそうですね」


 テラスで寛いでる私に、そう聞いてきたのは助手の少女だった。

 少女といっても見た目は少年にしか見えない。

 この街に入ってからと言うもの、少女はきらびやかな衣服に袖は通していない。

 今日もまた美しい銀髪は帽子の中に納めて、半ズボンである。

 白魚のように綺麗な指には、すらない。


「愉しげに見えるか。そうだろうな」

 と、腕組みをして何度か頷いてみせる。

 要領を掴めない少女は首を傾げてみせる。その仕草もまた愛おしいものだ。


「さて、行くとするか。アイツに私の作品を見てもらわなくちゃな」


 席から立ち上がると、少女を置いて足早に歩き出した。

 少女は慌てて会計を済ませて後ろに続いた。

 くっくっくと、堪えきれない笑い声が漏れ出す。

 私は、アイツの驚く顔を想像して「愉快、愉快」と呟くのだった。

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