3-2

 ルニアは少し元気がないのか、俯きがちである。

 男とも目線を合わせようとしない。

 男は腕時計を一瞥して、口火を切った。


「それで、要件はなんだ。眠れないから子守唄を歌ってほしいと言うのは却下だぞ」


 男が発する子ども扱いする言葉に、今迄なら荒げて否定するとこだが、ルニアは推し量るように沈黙を守っている。


 男はため息をひとつ。

 そして棚上に置かれたポットから、二つのグラスに注いだ。

 ひとつはルニアの手に握らせる。

 少し温いが甘いシナモンの香りが鼻腔をくすぐった。

 リラックスする時には欠かせないホットミルク。

 男は、いいアイディアが浮かばない時は決まって飲むことにしている。


 ルニアは暫しグラスに注がれたミルクを眺めていたが、ゆっくりと口をつけ飲み干していく。


 そして初めて男の顔を真っ正面から捉えた。


「いつになったらその……ご主人様の、ご寵愛を戴けるのですか?」


 開口一番、ルニアは真剣な表情に、それでいて少し頬を染めながら思いの丈をぶつけた。

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