2-5

 迎え入れた今朝の女は、朝よりも艶やかなドレスを身につけている。

 胸元が大きく露わになっており、深い谷間が浮き彫りになっている。

 定刻通り、訪れたことは良し。

 私は、扉を大きく開けて招き入れた。

 隅の方で、緊張した面持ちのルニアが男の顔を凝視している。


「あら、今朝の子供じゃない。なあに、子供の前でするの? あなたって見かけによらず変な嗜好があるのね」


 下卑たわらいを浮かべたかと思えば、女は早速纏っていたものを脱ぎ始めた。

 私は相手の動きに合わせて、カフスを外し腕まくりをして、結んだタイを外す。

 解いたタイで女の腕を取って縛り上げた。

 咄嗟のことで、判断が遅れた女はなすがままにされていた。


「ちょっと、痛いことはいやよ。やめっ」


 女が言い終わらないうちに私は自分の口唇で力強く塞いだ。

 口内に仕込んだ薬を女の喉奥に唾液と共に流し込んだ。

 女はなんとか噎せながらも、薬を飲み込んだようだ。


 口端から涎を垂らす女を一瞥して、私はルニアに指示を出した。

 女を膝立ちにさせてから、縛った腕を上に持ち上げて、天井から吊るした鎖に通す。

 何かを感じ取ったのか、ガチャガチャと鎖を鳴らして、逃げようと身をよじる女。

 だが、その焦点は既に曖昧模糊あいまいもことなっている。


「よろしくお願いします」


 ルニアは律儀にお辞儀をして、女の前に立つ。

 その手にはルニアが初めて仕上げた処女作ーー苦悩の梨が握られている。


「ああああう。あううううあ、あううう」


 もう人語を解していない女の恐怖を受け止めながら、ルニアは手にした苦悩の梨を女のだらしなく涎を垂れ流す口に詰め込んだ。

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