2-4
「さて、今宵の話だ」
私は窓の外へ投げかけていた視線をルニアの方へと戻す。
「このあと今朝に買った女が、ここを訪れる訳だが、どうした。不機嫌そうな顔して」
ルニアは「なんでもありません」と
だがこれ以上、助手のご機嫌をとっている場合ではない。
私は鞄からあるものを取り出した。
「今日は、これを試す。まだまだ改良の余地があるのだが。ルニアの作ったものだ。試さないわけにはいかない」
「ご主人様、そんな失敗作。捨ててください」
ルニアは見るのも嫌なのか、目線を外して吐き捨てる。
「ルニア。誰にでも、処女作はあるものだ。だがこれは習作とは違う。日の目をみる権利は等しくある」
私は愛おしそうに、指を這わして撫でる。ひんやりとした金属の肌質。
器具に備え付けられた
ギリギリと重たい軋み音を響かせて、姿を変えていく。
私が教えた通りに組み上げられている。
ルニアは物覚えがいい。一度言ったことは、寸分違わず再現してみせる。
繊細さに欠ける部分は、修練すればいい職人となれる才を秘めていた。
「今夜が、ルニア。お前の作品の処女航海でもある。存分に試すとしよう」
嬉々とした私の表情を見つめていたルニアもニッコリと年相応の笑顔を見せた。
いつもの無理して淑女めいた微笑みとは違う自然な笑いだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます