第2話 苦悩の梨

2-1頬に生クリーム

 ーー不貞を働くとはどう言うことだろうか。

 どんな職務にも相応の矜持きょうじが私はあると思う。



 ❇︎



 カフェのテラスで今日も日課をこなす。

 世の中のことを知るために、新聞に目を通して、

 砂糖をたっぷり入れた甘い甘いカフェを飲むこと。


 ひとつ、今までと違うのは。


「ご主人様、このパフェは格別ですね」

 キラキラとした眼差しをこちらに向け、ほっぺたに生クリームをつけて、話し掛けてくる。

「ルニア。せめて子女らしく、教えた通りに振舞ってくれないかな」

 そう言いながら、ルニアの頬についた生クリームを指ですくい、舐めてみせる。

 みる見る顔を赤く火照らせながらルニアは小さくなってしまう。


「……申し訳ありません。私としたことが、パフェに我を忘れて。今度はもっと品良く振る舞えるようにします」

 顔が赤くなったかと思えば、今度は青白くなっている。忙しないことだ。


 目下の目的はあるものの、そこまでの道程は長い。

 それまでの間、目の前の少女ーールニアに技術を仕込みながら、旅を続けている。


 これは、気まぐれである。

 今まで、ルニアと同い年くらいの少女も、年若い女性も、何人も自分の作品を仕上げるために、手に掛けてきた。


 そろそろ、また新たな作品を作りたい。

 目ぼしいものがこの街にあるのか。

 周囲に目を配らせながら考えていると、ふと一人の女性と目が合った。

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