ダリアの願い(おまけ小話その2)


「なんでも叶える、か」



 そんな宣伝文句と共に掲げられた優勝の証「カクヨム杯」。

 普段なら、お伽噺の世界だと切って捨てる。

 まさに夢のような願望機である。



 風に白髪を棚引かせるダリアは、そのベレー帽を胸に当てて瞑目する。

 夢想するのは、あの頃。

 まだダリアが人間として、敬愛すべき我が王に忠義を捧げていた頃。

 もう数十年も前になる。



「………王よ」



 精神生命体となったダリアは、自らの手で道を誤った我が王を正した殺めた

 裏切られた憎しみはあったが、それよりも、王が間違えたことの悲しみが強かった。

 今でもダリアは、叡智に溢れていた陛下を尊敬している。

 ならば、叶うならば。



「………かの者に、貴方様の国を背負わせても、善いのだろうか」



 ダリアを打ち倒し、ともに王を討った主人公

 彼は王の居ないあの国を、自らが復興すると宣った。

 それはすなわち、彼が新たな王となること。

 

 それならば。

 あの国が、また栄えるのならば。

 余は乞い願おう。

 


「せめて貴方様の国が、新たに繁栄を迎えることを、かの者が希望の光となることを…」



 瞼を持ち上げ、その紅き眼で空を仰いだ。



「余は願おう」



 雲を穿つ蒼天には、夫婦めおとのオシドリが羽ばたいていた。

 

 内心、自分の恋人が欲しかったな、と思ってしまったダリアであった。

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