第3話 主人公、世界観を知る。後編(再投稿添削済み)

「この世界が文明化したのは2000年前のこと。そのとき、文字とともに魔法も発見された。しかし、200年前ある一人の男の子がその世界の魔法をくつがえした。そのとき使われていた魔法は小さな炎を生み出したり、少量の水を生成したり…そのくらいのごく単純な魔法しかなかった。しかし、彼は巨大な炎や沢山の水を生み出すだけではなく、温度を変えるという魔法を生み出した。その魔法はその地の魔物を一瞬で灰にしたり、凍らせたりと殺傷能力の高いものだった。150年前、バルというオークと人間のハーフが生まれた。通常異種族で交配すると遺伝子が生成されなかったりするのだが、バルは違かった。魔力も人間の300倍ほどあり、強靭きょうじんな肉体も持ち合わせていた。彼は魔物とも意思疎通ができる。もちろん、人間とも会話ができるのでこの世界唯一の中立的存在だったのだ。」


 そういうと彼女はコーヒーをすする。かなり画になる。男にしか見えないのだが。


「しかしバルはある日魔物と人間たちが共存できる社会を作るため彼は、当時一番力を持っていた権力者に魔物をやたらむやみに殺さないようにしてほしいという趣旨の話をするが、彼は断った。その頃の権力者たちは魔物討伐を冒険者たちに依頼し魔物の遺体を解剖実験する仕事をしていたのだ。そのおかげで今は魔物のことがだいぶわかってきたみたいだな。さらに、バルは今後の運営の邪魔になるとして家族もろとも焼き殺そうとした。しかし、バルは一人生き残ってしまった。彼は人間を憎み、自らを魔王として魔物たちを従えた。そして150年たった今、いつ魔王が世界征服をしてくるかわからない状況で人々は暮らしている。…まあ、こんなものかしら。」


「なるほど、転生先は今は平和ですが、いつ魔王が行動するかわからないという状況なのですね。」


「ええ、そうよ。」


「まあ、荒れに荒れているよりかはまだましです。」


 正直、転生後はゆっくり研究や勉強をして暮らしていたかったが、そういうわけにもいかない状況らしい。しかし…こういうものにも期待を寄せていた自分がいたらしく、少しワクワクしている。


「以前現れた、記憶持ちの方は自分で魔法を編み出したのですよね?」


「ええ。ちなみに彼は70歳の時、魔王に挑み無残にも消し飛ばされたわ。」


「…そうですか。」


「そういえば、向こうでの基本的なことは今のうちにしか決められないわよ。」


「え、どんなことを決められるんですか?」


「そうね、ここに資料があるから、読んでもらえるかしら。」


 と丸投げ。まあ、特に厚いわけでもなく30分程で読み終えた。


 書いてあったのは名前、出身場所などが決められることそれに関しての注意事項だったので30分くらいで読み終えてしまった。


「あの、すいません。No.1765841お姉さん、起きてください。」


 読んでいた間、暇だったのか、ソファで居眠りをしていた。


「ああ、ごめんね。最近夜更かしばっかで眠いのよ。ふわぁ~」


 かわいい。さっきまでクール系だったのでギャップにドキッとした。顔や言動に出さないようにはするのだが。


「そうなんですか。それじゃあ、決めるもの決めちゃいましょう。」


「なんかやる気だねぇ。どうかしたの?」


「…いえ、なんでもないです。」



 それから1時間みっちりと話し合った結果、大体はこんな感じになった。これは僕の個人的な趣味と偏見から世界を救う勇者のお供の最強魔法使いをイメージして作った。…さっき聞いた通り、チート級に強くなるわけではないので、勇者のお供になるには僕の努力が必要なのだが。


 名前:ナイン

    …名字は決められないらしく、いつもゲームをするときに使っていた名前にした。

 出身場所:ブルバ州のナユタ域

      …郊外。日本でいうとブルバは東京都で、ナユタ域は八王子や、立川といったところらしい。

 出身家:どこでも

     …文字どおり、ナユタあたりならどこでもいい。ただし貧困家庭は除く。

 適正職業:魔法使い

      …魔力が高く保存できるようにこれにした。後々、攻撃魔法が強化されたりするので使い勝手がよさそう。

 特技:圧縮魔力、操作向上

    …圧縮魔力は保存するときに魔力を圧縮でき、操作補正は狙ったものに魔術が当たりやすくなるものだ。これは簡単に操作する人もいるので、チート級ではない。

 先天性スキル:後天性スキル補正

        …後天性スキルが少し強くなる。スキルの中で唯一、訓練できないスキル。


 とまあ、こんな感じだ。No.1765841お姉さんいわく特に目立って珍しいわけではなく、このくらいの人はざらにいるらしい。スキルがあるだけで僕にとっては新鮮なのだが。


「ふう、やっと終わったわね。休む時間もあるけど、忍耐力測定も準備が整ってるらしいわ。どうする?」


「もうやることはやったし、特に疲れてもいないので忍耐力測定します。」


死んでから体がすごく軽い。今ならなんでもできそう…とまではいかないが、いつもはできなかったことができそうな気分だ。


「え、ほんとに休まなくていいの?」


「はい、疲れてないので」


 さっきから疲れもたまらなくなっている。


「…そう、じゃあ後は頑張ってね。」


「はい。」


「こんにちは、たける様。準備が整いましたので、お迎えにあがりました。」


 No.1765842受付の人(…今度からそう呼ぶ事にした。)が丁寧な言葉で迎えに来た。苦痛を受けに行くのは嫌だったが。が楽しみだ。No.1765841お姉さんがギリギリできる範囲までスキルを増やしてくれたらしい。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る