第2話 主人公、世界観を知る。前編(再投稿添削済み)

 僕の目の前にある球は金色だった。


「…お、おめでとう!あんた、見事に当てたな!」


 受付の人が興奮気味になっている。


「あ、ありがとうございます。」


 やはり、当てるとかなり嬉しい。


「じゃあ次は、記憶を残しておくためのものなんだが…さっき確認したところ、かなり忍耐力がいるらしいんだが、やるか?」


嬉しさもつかの間、なんだか嫌な予感がする。


「やる内容やそれをクリアするメリットデメリットを教えてもらえますか?それによって決まってきます。」


「ああ、内容はいたってシンプルだ。苦痛に耐えるってだけ。俺たちは忍耐力測定って呼んでる。」


「どのくらいの、どのような苦痛なんですか?」


「どのくらいかはわからないな。ここにいるやつらは基本的な痛覚がないから一応痛みには近いがちょっと違うらしいぜ。」


 痛みに近いなら僕はそれに強いほうなので、メリットとデメリットのことを聞く事にした。


「そうですか、クリアするメリットとデメリットは何ですか?」


「そうだな、メリットは記憶の引継ぎだが、デメリットは下手したら転生できないらしい。」


「どんな苦痛かわからないとなると、かなりリスクが高いですね。」


「まあ、下手すればの話だから。下手しなければいいんだよ。」


 適当すぎる。というかデメリットがかなりでかすぎる…気がする。


「メリットとして転生先でチート級に強くなれるとかないんですか?」


「聞いた限りではないな。だが、向こうの世界では記憶を引き継ぐこともかなりのチート機能だから気にすることはない。」


「そうなんですか。まあ、確かに子供のころから大学生ほど勉強ができるのはかなりチート機能ですしね。」


「それじゃあ忍耐力測定やるか?無理にやれとは言わんし、やるなとも言わない。あとは自分できめな。」


まあ、よく考えてみれば記憶がないのも転生できないのもかわらないか。


「はい、ではやります。」


「…あんた、さっきも思ったんだが、考えなくていいのか?」


「それ、結構言われること多いんですが、これでもしっかり考えてるんですよ?」


「まあ、考えているならいいんだが…それじゃあ行くぞ。」



 長時間の長旅を終えて、案内人に連れていかれたのは最初にこの人にあった場所だった。


「じゃあ、この奥にスペースあるから。」


「え、この奥に忍耐力測定する場所があったんですか?」


「いや、えっと、この奥にあるのは休憩スペースで…」


「まだ忍耐力測定はしないんですか?」


「なんか準備があるみたいでまだできないみたいなんだ。それにあんたも疲れているだろう?」


 確か、この人僕が苦痛を耐えるって宣言した時すぐ連絡いれてた。あそこからここまで来るのにかなりの時間経っている…そんな準備がかかるってかなりやばいのか?


「確かに少し休みたいですね。」


「まあ、このあとやること沢山あるからまずは休憩室に行くぞ。」


「は、はい。」


 この後待ち受ける予定になっている苦痛のことを考えながら、受付の人の後ろをついて歩く。ところでやることが沢山あるとは一体なんなのか。


「ここが休憩室だ。」


4メートルくらいの大きさのドアが目の前にある。


「それじゃあ、がんばってな。」


「え」


 受付の人が何を言っているのかわからず、まぬけな声が出る。しかし彼はかまわずドアを開け、僕を部屋の中へと押し込む。かなり強引だ。


「うふふ。No.1765842は雑に仕事をするわね。」


「いや、このあとやることがあるから。…あとは任せた。」


 そう言って受付の人ことNo.1765842さんはいそいそと部屋を出ていく。あとに残ったのは僕と中性的な顔立ちの女性らしき人物だ。


「こんにちは、たけるさん。私の名前はNo.1765841です。お姉さんとかよんでもらってかまわないわ。」


「こ、こんにちわ。えっとさっきの受付の人、あとは任せたって言ってましたがなにをするんですか?」


 状況の整理は大事だ。


「今後のことを話しに来たのだけれども…今来たばかりだし、少し休憩してもいいのよ?」


 特に、急ぐこともないが、だらだらはしたくない。


「いや、やることがあるならやっちゃっていいですよ。」


「そう、じゃあ今からは転生後のことを話すわ。」


「転生後…世界観の話ですか?」


「そういうことになるわね。」


「それはありがたいですね。でも、記憶を引き継ぐことができないかもしれないんですよ。他のお仕事とか大丈夫なんですか?」


「大丈夫よ。仕事に関しては記憶を引き継ぐことのできる人ってあまりいないから暇でしょうがないのよね。」


「そうなんですか。」


「まあ、コーヒーでも飲んで。」


 と言ってコーヒーを渡された。が、コーヒーは砂糖5個くらい入れないとのめないので、一口飲んで机に置く。しばらくすると彼女が話し始めた。

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