奇妙な協力者 2








「ってことで、いくら好かない相手でも大事なクライアントだしな。お前気に入られてるんだから、今日も見舞いに行ってきてくれ」



すっかり考え混んでいたようで、気がつくと部長がまだ側に居て、何やら面倒なことを口にしていた。



どうやらまた、恵一を取引先の見舞いに行かせたいらしい。







「部長、気づいてて言ってるんでしょう。あの人が僕を見る目、なんだか……アレじゃないですか」




「わかる。わかるよ? でもほら、視線で脚とか尻とか顔とかを見てるだけなんだから多めに見てやりなさいよ。舐め回すみたいに見られてるなぁとは思うけどさ」



「部長、それ自分の娘が誰かにされたらどうしますか?」



「ぶっコロス!」



矛盾もはなはだしい。



「とにかく、お前が視姦されるだけで仕事が降ってくるなら万々歳だ。……あ、パワハラで訴えないでくれよ。相手は尿管結石なんだから、襲われてもまあ、最悪の結末にはならないだろうと承知の上で、俺はお前を行かすんだからな?」



「下品なこと言わないでください」



「見舞いの花代は3000円以内で」と言って去っていった部長の背を見送りながら、恵一は駅前の小さな花屋のことを考えた。

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