奇妙な協力者
奇妙な協力者 1
***
「はあ」
ストーカーに、「ストーカーに注意しろ」と、念を押されてしまった。
「どいつもこいつも」
「おお、どうした石橋、ため息なんて吐いて。やめろやめろ。辛気臭い」
「部長……」
最近、加齢臭がキツくなってきた部長に「辛気
もし、手紙が本当だとしたら、手紙の差出人が言うストーカーとは誰のことだろう。
このオフィスの中に、その人物が居ると言うのだろうか。
高層ビルのワンフロアを貸し切った、見た目にきらびやかなこのオフィス。
誰も彼も澄ました顔でパソコンをカタカタと鳴らしている。
恵一が利用する駅は、職場最寄り駅であるJR新宿駅だ。
外回りの際にはもっぱら電車を使う。
以前は、ごくたまに営業車を使用していたが、それも去年事故を起こしてからは無くなった。
手紙の差出人であるストーカーを、仮に「茶封筒」と呼ぶことにする。
「茶封筒」は「恵一と同じ会社の人間が恵一をストーキングしている」と言った。
なぜ、職場の人間とわかったのだろう。
特に制服がある会社ではない。
社員証はあるけれど、社外ではつけない。
このSNS社会、どこに誰の目があるかわからないから、
「あの会社のあの人、こんなことしてましたよ」と悪い噂を立てられないためには不用意に身元を明かさないことは重要だ。
その場合、可能性としてあるのは、外回りやランチで外に出るときに、会社の誰かと自分が共に行動している姿を茶封筒が見つけて……?
ということは、新宿駅周辺の企業に「茶封筒」は居る?
「ああ。だめだ、だめだ……。仮定を前提に話を進めたんじゃ土台からグラグラじゃないか」
確かな情報を元に、組み立てなくては。
こんな風に悩まなくてはいけないのは、どれもこれも、不十分な情報しか寄越さずに、痛々しいポエムばかりに文章を割く、茶封筒が悪いのだ。
数日間に渡って5通も同じような手紙を投函したくせに、わかったことと言ったら、
「ストーカーは貴方と同じ会社の人間」
「貴方のストーカーは背の高い男性」
「いつも貴方を見つめて居る」
等々、これぞという情報がまるでない。
5通を同時に開封した日、「6通目の投函を待とう」と言った恵一に萌が言った。
5通目の投函から、ぱたりと投函が止んでいるのだそうだ。
茶封筒の身に何かあったのだろうか。
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