奇妙な協力者 3







花。


そう、花屋だ。

新宿駅そばの狭い花屋。


手に傷のある店長が居るらしい……。






***






「花が好きな男?」



「ああ。毎回ラブレターに、花になぞらえた愛のうたを書くような奴」



「それはまた、恵一さんも凄いのを引っ掛けたな」



昼食の後の教室移動中、凍えた廊下を歩きながら萌は京平とリョウマに、恵一の元へ届いた茶封筒のことを話した。



「萌、探すのか?その手紙の差出人を」


「うん」


「手伝う」


「いい」


「は?何で。手伝うって」


京平の顔が不機嫌になる。


「人手は多い方がいいじゃん。この前の公園だって一緒に行ったのに何で今更? 気になるじゃん。心配だ」



「ありがとう。でも、いい」



話したら二人が手伝いを申し出てくれることはわかっていた。ただ、


ー考えごとしてどうしたんだ?

ーなんか元気ねえじゃん


さとい二人に気がつかれたら、余計な嘘をつくことの方が、裏切りだと思ったのだ。



「まだなんのアテもないからとりあえず探してみる。何かわかったら今みたく、ちゃんと言うから」



先日、萌は恵一に、「京平とリョウマを巻き込むな、危険に晒すな」と怒られた。


友達を巻き込みたくないと、一番思っていたのは自分だったのに……。





それなのに、売りことばに買いことばで「あいつらが勝手に付いてきた」だなんて、心にもない事を言ってしまった。


京平とリョウマに甘えていた。

自分の力を過信していた。

きっと何も危険は無いと、楽観視していた。



巻き込みたく無い。



嘘をつきたくない。



隠したくない。



大切な人には。






だから、



「兄さんと一緒に探してみるよ。だから心配要らない」



奇妙なことは、いつも兄を中心に起こるから。


「今回は兄さんと一緒に、ストーカー野郎を捕まえる。だから、待ってて」



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