公園 6




ひそひそと囁かれる声はまるで木の葉のざわめきの様に、重なり合って聞こえた。

近づいては遠くなる。

捉えどころの無い響きだ。


首元を冷たい風が吹き抜けた。


「どう言う意味だ」


「萌、なんて言ってるんだ?」


「兄さんの後ろに、誰かもう一人居たって……それは生きてる人間?」


【そうだよ。そぉだよ。うん……そう。危ないから。あぶないよ】


「どんな奴なんだ。教えてくれ」


【……ドンナヤツ? どんなやつ。男だった。おじさん。若い男よ。……カメラを持ってた】


「カメラ? 何かを撮ってたのか?」


「盗撮?」


「 わからない。何で危ないって思ったんだ? 男は何をしてた」


【写真が好きなんだ。写真。しゃしん。僕もあいつに撮られた。あの人は写真が……】


ー写真が?


そのとき、公園の入り口から大きな犬の鳴き声が聞こえた。

大型犬の荒い息遣いが近づいてくる。


それに怯えたのか、黒い水たまりの人々は急におしゃべりを止め、

水の中へと姿を消してしまった。

水面が凪ぎ、水たまりはそろそろと暗い木の陰へと引いていく……。


「待って!まだ話したいことが」


「萌!」


振り向くと叔父の恵一がこちらに向かって走ってくるのが見えた。

萌の足元に、恵一の手からリードを振りほどいて走って来たであろう隣の家のゴールデンレトリバーがまとわりつく。


さっきまで水たまりがいた場所を、隣人の犬はじっと見つめていた。

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