デート7



この前・・・のストーカー」と言われて、恵一の頭には数人の顔が浮かんだ。

正直、数が多すぎて把握できていない。


あいつは前の前だったから違う。

こいつは前の前の前だから……


「……あいつか?」


「多分違う。アパートのエントランスで兄さんが挨拶してた奴だよ」


「ああー、あいつな!」


萌の一言でぽんっと記憶が蘇った。


話は遡り、つい一ヶ月前のことだ。

夜中に醤油を切らしたことに気づいた恵一は、サンダルを引っ掛けて近所のコンビニへ買いものに出かけた。


普段、一人で外出するときは、イヤホンで音楽を聞いていることが多い。


その日も例に漏れずイヤホンをしていた恵一は、コンビニ帰りの自宅アパートのエントランスで後ろから肩を叩かれた。


振り返るとグレーのパーカーを着た男がフードを目深に被り、携帯を握りしめて立っている。

目元が暗かったせいで顔はよく見えなかったが、なんとなく若い気がする。


ご近所さんだろうか。


「あ、えと、こんばんは」


てっきり同じアパートの住人だと思った。


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