デート8

恵一が挨拶をすると、

男はわずかに身体から力を抜いたように見えた。

拳を握りこんでいるせいで肩が上がり首元が詰まって見えていたのだが、それが幾分かマシになった気がする。


「あ、あ……あの……」


ぼそぼそと何事かを呟きながら意を決した様に影の落ちる顔を上げると、携帯を持ち上げて恵一に尋ねた。


「連絡先……交換、しませんか?」


その瞬間、恵一の右ポケットが振動する。

急ぎ見ると、萌からのラインだった。


-早くエレベーターに乗って。

違う階で降りて。

階段で、部屋に戻って。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る