第4話 サブリナママのクリームチーズケーキ・アゲイン その7
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〈やっぱり〉
アンティーク調の家具で飾られた店内は、床が観葉植物で覆われ森のようになっていた。
テーブルに煉瓦積みの階段が組んであり(ミニチュアサイズ)
テーブルとテーブルを渡る吊り橋が幾つも渡してあり(ミニチュアサイズ)
カウンターの上に家(ミニチュアサイズ)
切り立った断崖を思わせる棚の上にも家。
カラフルな屋根で飾られた、家、家、家。
見渡す限り家ばかり。
全てがミニチュアサイズのコロポックルタウンになっていた。
〈あ、列車が走ってる〉
レトロな外観のミニチュアトレインが、
シュッポ、シュッポ、シュポッポッ・・・
と、水蒸気の煙を吐き出しながら店内を周回していた。
おそらくマシキュラン製だ。
町中では、サンデーママと同じサイズの住人がせわしなく走り回っては、のべつまくなしに喋りまくってる。
かなり
こっちに気づいた一団が、
「いらっしゃいませ」
「いらっしゃいませ」
「いらっしゃーい」
「何にいたしましょう」
「何にいたしましょう」
「何にする」
止まらない。
ミニチュアハウスの扉が開き、次から次にワラワラとコロポックルが出て来る。
巣をつつかれた蜂のようだとハンゾーは想った。
「クリームチーズケーキちょうだい」
シェリーが元気よく言った。
「2つね」
「まあまあ2つも」
胸の前で両手を合わせたサンデーママが、
きゃー
と、歓声を上げた。
「そんなに気に入ってくれたの? うれしいわ~」
語尾にハートが見える。
「ええ、とても美味しかったですよ」
『ボクはひと口も食べてないけどね』
ハンゾーの肘を抓った。
『まだ根に持ってんのかよ。ホットケーキ20枚も喰ったろ』
『それと、これとは別腹だよ』
『別腹って……』
「あとバタークッキーも1つね」
「まあまあ、、バタークッキーまで!!」
テーブルの上をドタバタと走って、サンデーママが奥へと消えた。
どこまで続いてるのか、広いテーブルだ。
財布を取り出し、会計を済ませようとしたハンゾーが、思い出したように言った。
「所で、サブリナママって誰なんだ?」
振り向いたシェリーが、何故か眼を剥いた。
「私がサブリナよ」
ハンゾーからクレジットカードを受け取ったコロポックルが言った。
「あ、そうなの」
ハンゾーにレシートを渡したコロポックルが、
「あら私がサブリナよ」
「え?」
「あたしだって、サブリナさ」
貨物列車から袋詰めのバタークッキーを運び出したコロポックルが言った。
シェリーがハンゾーの手を取った。
「皆さん、サブリナなんですか?」
『逃げるよ』
「はぁ?」
「私は、サブリナ・マンデー」
『これが始まると長いんだよ』
「私は、サブリナ・チューズデー」
「あたしゃサブリナ・ウェンズデー」
「シェリーちゃん!! シェリーちゃん!! お茶をして行きなさい」
ティーセットを運んで来たサンデーママが、バケツサイズのティーカップにお茶を注いだ。
その後を、頭の上にお盆を乗せた男コロポックルの一団が続き。
次から次に、お菓子を運んでくる。
『逃げられないね』
『だな』
「私は、、サブリナ・1月」
「私は、、サブリナ・2月」
その間も、サブリナママーズの自己紹介は延々と続いていた。
〈こりゃお客が寄り付かない訳だ〉
納得しながら、ハンゾーがお茶を啜った。
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